研究課題/領域番号 |
24531197
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
田中 宏子 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (00324559)
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研究分担者 |
秋山 元秀 滋賀大学, 教育学部, 教授 (00027559)
木全 清博 京都華頂大学, 現代家政学部, 教授 (40142765)
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キーワード | カリキュラム構成・開発 / 教員養成 / 学校 / 災害対応 / 減災 |
研究概要 |
本研究は、東日本大震災の被災地における学校の被災実態を踏まえて、教員養成課程における大学生のためのより充実、発展した災害対応教育プログラムの開発を目的としているものである。 2011、2012年度には、関東大震災、伊勢湾台風、阪神淡路大震災における事例を踏まえ、かつ滋賀大学の地域教育サポート事業から得られた成果の応用として、東日本大震災の被災地に学生をスクールサポーターとして派遣した。しかし、学校は地域の避難所としての機能も期待されており、受け入れ側の教師がスクールサポーターの統括をすることは難しい。また、初めての学校でかつ短期間の活動で、派遣された学生が現地の教師や児童生徒と信頼関係を構築する難しさもある。昨年度は、当プログラムが実施したこの派遣事業のもたらした課題や他の教育支援ボランティアに関する先行事例をもとに、災害復興教育支援のあり方を考察し、発災後の教育活動支援システムを構想した。自分達が居住している地域(被災地外)で、日常からスクールサポーター活動を行っている学生が、この教育活動支援の核となるシステムである。支援が短期間であっても学校との橋渡し役の核となる学生が学校にいることで、教師の負担も軽減される。 発災後の教育活動支援システムに関して、当然学生への事前の研修が必要となる。しかし、現在我が国にはこれといった具体的なものはない。そこで、昨年度に視察したサンフランシスコ・ベイエリアのAmerican Red Crossの訓練が参考になる。 American Red Crossは日本赤十字社と異なり、災害時には避難所設営を行う。そのため、あらかじめボランティアや高校生に対して避難所運営の訓練を行っている。日米を問わず、教育学部の学生がこの訓練を受けることにより、スクールサポーターとして日頃活動している学校への災害時の支援活動が有効なものになると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の被災地に、滋賀大学の院生・学生をスクールサポーターとして派遣し、被災地における学校の実態を把握するといった当初の目的は、申請時の研究計画を若干変更せざるを得なかった。その理由として、現地の学校の現状、ニーズを第一に考えること、関西から東北は距離が遠く、大学の授業との兼ね合いで活動が短期間にならざるを得ないことなどからである。直接現地に赴く機会は、当初計画よりは減ったが、被災地の学校教育関係者らの手記等の資料から、災害後、刻々とかわる場面への教師の対応事例を、地震発生後の時間経過にそって並べ整理し、学校の災害対応について8つのステージを抽出し、課題を整理することはできた。 2012年度は、日本教育大学協会に属する大学のwebシラバスを用いて、災害に関わる授業を拾い出し、教員養成課程における災害教育の実施状況を把握した。2013年度は、このシラバス調査をもとに、シラバスに災害についての内容を記載されている日本教育大学協会加盟大学の先生方を対象として、教員養成課程における「災害教育実施状況の調査」を2014年3月に実施した。調査の主な内容は、災害に関する授業科目や時間数などについて、災害を導入した時期と趣旨、受講者に対する期待、授業の課題、教員養成における災害教育の可能性、学生災害ボランティアなどについてである。本調査は、災害教育を行っている大学教員間の情報を共有してネットワークを広げることにも貢献すると考える。現在、この調査について分析中であり、本年度中に結果をまとめ、公表する予定である。 従って、現在までの達成度は、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2014年3月に、シラバスに災害についての内容を記載されている日本教育大学協会加盟大学の先生方を対象として、教員養成課程における「災害教育実施状況の調査」を実施した。この調査は、一度で終わりにする調査ではなく、数回のやりとりを繰り返し、内容を深めていく予定である。 研究スタート時から行っている学校教育の教科の中での災害学習の検討については、初年度に行った社会科に加え、家庭科についても行う予定である。昨年度、カリフォルニアの一般家庭における災害への備えについて現地調査を行ったが、家庭内における家具の固定や備蓄等の備えに加えて、米国における地域コミュニティの災害への備えは、中学校家庭科の内容として応用できるのではないかと考えている。 東日本大震災の被災地の学校・教師・子どもの実態や課題については、被災地の学校に滋賀大学の学生・院生をスクールサポーターとして派遣しての観察・ヒアリングを継続して実施する予定ではあるが、被災地の学校をフィールドとした他の研究と重ならないよう配慮したい。従って、現地に赴くことができない場合の代替案として、滋賀県に東日本大震災の被災地の学校関係者を招き、原発事故等の人災も含めて災害発生時から現在までの状況と課題を話し合うフォーラムを開催することも考えている。 以上の方策より得られた知見を踏まえて、教員養成課程における「災害対応教育プログラム」の開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本教育大学協会加盟大学の先生方を対象として、教員養成課程における「災害教育実施状況の調査」を2014年3月に実施した。この調査票において、調査票の回収締め切りを4月に延長したことにより、データ分析にかかる費用が次年度に持ち越された。 当初の予定通り、アンケート調査集計分析にかかる経費にあてる。
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