一義的には、子どもが日常生活を送りあるいは子どもたちが日常的な学習活動を送る生活空間がまず子どもの環境となる。その環境において子どもは日常的に経験を積み重ねていく。この日常的な経験を提供する機会もしくは空間が筆者の言うところの郷土である。平成24年度より筆者は、郷土という存在を子どもが日常生活を営む生活空間と位置づけた上で、その郷土に所在しあるいは郷土において発生する諸事物・諸現象を教材として取り上げ、それら郷土教材の教育的機能に着目し、その教育的機能を最大限に発揮しうる郷土教育モデルを構築し提案する研究に取り組んできた。 このことを通して、拡張された環境における生活者たる子どもたちが、拡張された環境において成立させる経験をもとにして学習する際に、経験範囲や経験対象ばかりではなく、子どもたちが獲得する経験の密度が重要であるという新たな仮説を導き出した。これは次の二つの前提に立っている。第一に、子どもの経験は均質ではなく、環境や主体の状況によってその密度が異なるという前提である。第二に、子どもの経験対象となる環境は一定範囲で一定時間(学習単元の開始時と終了時においてもそうである)不変であるのではなくて、変成したり拡張したりするものであるという前提である。 最終的には、郷土に固有な教材の発見もしくは開発と、その主教材に関わって生じる学習活動を、個々の児童の特性を考慮した上で学習単元として構想することによって、授業のモデルプランを提案した。
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