研究課題/領域番号 |
24531209
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
吉田 敦彦 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (20210677)
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研究分担者 |
今井 重孝 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (80160026)
西平 直 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90228205)
西村 拓生 奈良女子大学, 文学部, 教授 (10228223)
永田 佳之 聖心女子大学, 文学部, 教授 (20280513)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教育学 / シュタイナー学校 / ホリスティック教育 / オルタナティブ教育 / 公共性 / ESD / 多様な学び保障法 / 総合的学習 |
研究実績の概要 |
研究計画に示した四つの研究の柱――[A]自己評価法を組み込んだカリキュラム開発、[B]総合的ESDカリキュラムの公共化、[C]卒業生への追跡調査、[D]オルタナティブ教育機関の公共性研究について、以下の通り研究を進めた。 [A]昨年度に引き続き、学校法人シュタイナー学園高等部および京田辺シュタイナー学校において、学習の評価方法をめぐる課題等について情報収集を行った。また、シュタイナー学校の教育現実に対して、ブーバー対話論の観点を手がかりにした解釈学的考察を行った。 [B]シュタイナー学校の総合的なESDカリキュラムを、ホリスティック教育の観点から位置づける研究を継続した。2014年10月に開催されたESD世界大会等での情報収集のほか、「教師のためのシュタイナー教育ゼミナール」(2014年4月~2015年3月)を開催して公教育関係者と共有し、カリキュラムの公共化へ向けた課題をリサーチした。 [C]京田辺シュタイナー学校の卒業生・保護者を囲んだ座談会に参画し、学習内容や教育環境に関する卒業生の意見だけでなく、保護者の意見についても併せて収集し、『親と先生でつくる学校』(せせらぎ出版、2015年)を通じて公表した。 [D]オルタナティブ教育を含む「子どもの多様な学びの機会を保障する法律」の法案作成をめぐって、現行の教育法との二本立て制度の可能性を含む意義と課題について考察した。また、「第2回オルタナティブな学び実践交流研究集会」(2015年2月)の開催を主導して、オルタナティブ教育の実践者との協力体制を強化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[A]日本のシュタイナー学校が連携・協力しながら相互認証機関を創設していくプロセスについてのアクションリサーチに進展があった。現在、国内の3つの学校で教員養成コースをスタートさせる準備過程において、シュタイナー学校の標準的な教育指針の開発が共通する課題となり、それに向けての検討が進んでいる。教育指針の日本版を構想する共同研究の一環として、シュタイナー幼児教育関係者との共同研究に携わることができた。 [B]H26年度も「教師のためのシュタイナー教育ゼミナール」を公教育関係者の参加を得て開催した。3年目になる今年度は、特に子ども観・人間観をテーマにし、実践者の実績を共有してディスカッションを行うことができた。また、横浜シュタイナー学園がESDを推進するユネスコスクールとして認可されたのに応じて、その教育実践に関する共同研究を進めることができた。 [C]卒業生調査に関しては、今年度は京田辺シュタイナー学校の卒業生と隔月でのミーティングを行い、ヒアリングを続けている。この予備調査を通して、彼らの現況が未だとても流動的であり、質的にせよ量的にせよ、本格的な調査を実施するタイミングではないとの判断に至った。 [D]H26年度に最も研究の進展を見たのは、シュタイナー教育を含むオルタナティブ教育の公共化へ向けたアクションリサーチである。フリースクール等支援の政府・文科省の政策動向に理論的に関与しつつ、全国のオルタナティブ学校を結集する「第2回オルタナティブな学び実践交流研究集会」を開催して共同研究を進めた。大会は二日間で延べ415名が参加し、今後の連携体制を強めることができた。また、フリースクール等支援のアドボカシーに寄与するために、多様な学びの場の全国実態調査を行う準備を進めた。 以上のように[A]~[D]について、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題[A]については、前年度の課題を継続しながらシュタイナー学校の標準的な教育指針の日本版の開発に関する共同研究を、国内のシュタイナー学校と連携しながら行う。 [B]については、引き続き公教育関係者とカリキュラムを共有し合う講座を開催する。H27年度は日本の社会・文化・風土のなかのシュタイナー教育をテーマにゼミナールを開き、直輸入ではない日本のシュタイナー教育カリキュラムづくりに向けた共同研究を進める。そのうえで、これまで開催してきたゼミナールを総括するシンポジウムを企画・開催する。 [C]については、前年度の判断を踏まえて、今年度も卒業生との隔月でのミーティングを行い、できるだけより多くの卒業生たちの現況のヒアリングを重ねていく予備的な調査を継続するにとどめる。 [D]については、国内の多様な学びの場への全国実態調査に参画しつつ、フリースクール等支援の政府・文科省の政策動向への理論的な関与を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として旅費において次年度繰越金が生じた。 その理由は、2015年4月に5日間に及ぶ国際会議に出席する旅費を見込み、また、全国の分担研究者や研究協力者が結集する総括的な研究合宿を最終年度に企画することにしたため、次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
[A]については、高等部を中心としつつ、国内のシュタイナー学校における教育指針の開発に関わる費用(出張旅費・印刷費)。[B]については、「教師のためのシュタイナー教育ゼミナール」の総括シンポジウム(2016年2月予定)に、これまで講座に携わった講師やゲストを招聘するための人件費。およびシンポジウムを記録、テープ起こしによる報告書作成のための人件費と印刷費。[C]については、卒業生へのヒアリング内容を整理するための人件費。[D]については、オルタナティブ教育の全国実態調査にかかる印刷費・郵送料。および「フリースクール等検討会議」を含むアクションリサーチに関する費用(出張旅費・調査結果の資料整理等にあてる人件費)に使用する。
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