研究課題/領域番号 |
24531213
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
守屋 誠司 玉川大学, 通信教育部教育学部, 教授 (00210196)
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研究分担者 |
富永 順一 玉川大学, 教育学部, 教授 (40349204)
中込 雄治 埼玉学園大学, 人間学部, 准教授 (90560623)
宮本 俊光 福山市立大学, 教育学部, 准教授 (20596936)
植野 義明 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (60184959)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 職業教育 / 数学教育 / 中等教育 / 複線型教育システム / ドイツ |
研究概要 |
ドイツの職業教育につながる数学教育について教科書と現地調査を実施した。学校体系が複線型で,中等教育における学校が選択制であるため,複線型で扱う数学は,そこの生徒のレベルを考慮し,将来の進路にも合わせた内容となっている。例えば,大学進学を目指すギムナジウムでは,抽象的数学や幾何の証明をしっかり指導する。一方,卒業後就職する基幹学校では,実際問題の解決に主眼が置かれ,幾何の論証は指導されず,複雑な図形の計量と求積が中心である。なお,実科学校では,基幹学校より高度な数学が指導される。また,基幹学校や実科学校の生徒の多くは,卒業後に就職し,職業見習いとして働きながら職業学校や職業専門学校に通い,仕事に直結する数学を集中して学ぶ。その上,各学校では卒業試験があり,卒業生の学力が一定以上であることを保証している。 このように,学校で学ばれる数学が進路や仕事に直結していて無駄がなく,生徒に過重な負担をかけることなく効率的に数学の学習ができる環境が整えられている。これは,卒業試験制度と合わせて,生徒の学力保証に繋がっている。 単線型教育制度の日本の場合は,全生徒に一律の目標と内容を設定して,その到達度を評価しているため,進路や学力による内容の変更等が容易でない。さらに,高等学校入試で学力を測り,進路に応じた選抜をさせるという機能は,今日,低下している。その結果は,学力保証が無いままに中等教育を修了していたり,適正・能力に合った就職意識が欠如していたり,さらには,大学生の学力や学習意欲の低下という問題に現れたりしている。複線型の導入と,学校教育から一端離れた人に対する学習機会の提供を国家的に支援できるシステムの設置が期待される。 研究成果は,数学教育学会例会・年会で発表した。さらに,玉川大学の研究紀要に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドイツに関する調査と教育内容の検討は予定以上に順調に行われた。しかし,年度途中に当初の研究分担者が退職し研究分担者資格を失い,研究分担者の変更が必要となった。そのため,9月に予定していたフランス・イギリスの調査は,新研究分担者が適当な渡航時期を年度内に取れず,平成25年度実施となった。
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今後の研究の推進方策 |
フランスとイギリスについて,教科書と現地調査から職業教育に繋がる数学教育の内容と実際を調べてまとめる。また,ドイツについては,教育システムが変わった地域があるため,更なる現地調査を行う。また,前年度の調査から国内の職業教育の実際をまとめる。 就職希望者や非理系進学者のために必要となる数学内容について,調査した外国の例を参考にして検討し,教育内容とカリキュラムの素案を準備する。さらに,教育内容に見合った具体的な教材の開発に着手し,教育実践の準備を行う。教育実践では,研究協力者として河崎哲嗣(岐阜大学),二澤善紀(近畿大学),詫摩京未(立命館宇治中学校・高等学校教諭),高須敏江(山梨県:北杜高校教諭),丹洋一(戸沢中学校教頭)を予定している。 分析結果のまとめや開発された教育内容・教材は,数学教育学会,GDM(ドイツ数学教育学会),玉川大学の研究紀要等に逐次発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者の植野がフランス・イギリスへの,富永がドイツへの実地調査を行うための渡航費を必要とする。その際に,現地での通訳や案内のための謝金も必要となる。さらに,国内外での発表や研究打ち合わせのための旅費を計上している。また,各国で使われている教科書の購入費とする。
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