研究課題/領域番号 |
24531218
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
大矢 隆二 常葉大学, 教育学部, 准教授 (50554276)
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研究分担者 |
伊藤 宏 静岡大学, 教育学部, 教授 (20022296)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 体育科教育 / 体つくり運動 / 投力の向上 / 小学校体育 / 教材開発 / カンボジア初等教育 |
研究概要 |
研究の全体構想として、小学生の体育授業に投力向上を意図した多様な動きづくりを実践し、映像合成分析・感想文の分析・投力測定結果をもとに投力向上に結びつく段階的な体つくり運動の教材を開発する。 授業実践およびデータ収集の具体的内容は、調査協力校(T大学附属小学校)において投力向上を意図した体育授業を実践し、基礎データを収集した。対象は、小学校第3学年(男子22名、女子32名、計54名)、第4学年(男子14名、女子23名、計37名)とした。体育授業は、第3学年12回、第4学年8回実施し、小学校学習指導要領解説体育編を基にした多様な動きをつくる運動内容を取り入れた。授業実践は、持久走の授業後に15分間、投力向上を意図した運動内容を教具などを用いて実践した。投力測定は、新体力テストの測定方法(文部科学省)に準じてソフトボール投げを実施した。映像データは、ビデオカメラ(VICTOR社製;GZ-MG980-S, 三脚使用;Velbon社製使用)を用いて、直径2mの円内でソフトボール(1号級)を投げる動作を円から4m離れた箇所から側面撮影した。投力測定時(初回・最終回の2回)に映像データを収集した。また、感想文は毎回の授業直後に「ボール投げをやって気がついたこと」などについて、自由記述文(50字程度)をデータ用紙に記入させ回収した。このように、平成24年度は体育授業の実践、投力測定、映像データ収集、感想文データの収集などを確実なデータとして保存し、分析準備を万全に整えた。 研究実践の意義、重要性は、持久走の授業後の時間を有効活用するために、同小学校で課題とされている投力向上を意図した運動を授業に取り入れた。結果として、投力が向上した児童が増加したので、 25年度以降は数値的に検証し、測定記録の変化までの一貫した基礎研究の基盤を確立できれば非常に特色のある研究になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の研究実績の概要に示したように、小学生の体育授業に投力向上を意図した多様な動きづくりを実践し、映像合成分析・感想文の分析・投力測定結果から投力向上に結びつく段階的な体つくり運動の教材を開発することにある。そのために、以下の3点を計画的に実践してきた。 I.体つくり運動に投力・捕球力向上を意図した多様な動きづくりを実践するとともに、指導前後の投動作の撮影データを取得した。現在、児童の投動作を分析中である。 II.指導後において、児童の意見感想文のテキストデータを収集した。現在、収集データをもとに、児童の思いをテキストマイニング分析中である。 III.I、IIの成果を踏まえた投力・捕球力を向上させるための体育教材を作成し、小学校現場で利用しやすいようにデジタルイラストや教材用の動画を作成中である。 まず、Iについては、指導前・後の投動作を側面から撮影し、投げだしの角度分析、歩幅の距離分析、上体の角度分析など、動作の変容を分析するための映像データを分析している。また動作撮影と同時に、ソフトボール投げの測定記録(参考:文部科学省新体力テスト)を実施前後の2回実施し記録データを保存した。IIについては、毎回の授業後に感想文を記入させ、テキストマイニング分析を始めている。IIIについては、児童に投力向上の動きを理解させるために、授業実践で行った運動内容をデジタルイラストやデジタル動画にするなど、教材化(CD)していくための万全な準備を整えている。 このように、研究の目的を達成するためにおおむね順調に進展しており、研究体制は万全である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、これまで体つくり運動に投力・捕球力を意図した体つくり運動(多様な動きつくり)を調査協力校の第3学年および第4学年の体育授業に組み込み実践してきたので、そこから派生する投動作の影響・効果を指導前後の動作分析から検証する。動作分析では、児童の投動作の指導前後の映像比較から、数値的(投げだし角度分析、歩幅の距離分析など)に座標表示し、各部位の動作変容の検証や同一人物および他者との比較分析から投力・捕球力を意図した体つくり運動の効果を検証していく。 また、児童の感想文のテキストマイニングでは、テキストのみでは検証しにくかった言葉(単語)の関わりや児童の思いを分析し、数値化し分析していく。これにより、児童が投動作を含む体つくり運動を繰り返し練習していく過程において、達成感や充足感など授業後の思いを単語の関わりから心情の変容として読み取ることができる。さらに、児童のソフトボール投げの測定結果との関係も検証していく。以上、児童の投映像の動作分析と感想文のテキストマイニング分析の2点を検証・考察するとともに、同時進行で体育教材の開発(CD化)に向けた基礎研究の基盤をつくっていく。また、24年度に調査した児童については、25年度にも系統的な継続調査を実施する。 なお、平成24年度に収集したデータの分析結果をもとに、平成25年度に開催される日本体育学会(平成25年8月28日;立命館大学)および日本教科教育学会(平成25年11月23日;岡山大学)において研究成果を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究実績において得た児童の投映像データ・感想文データ・投力測定データを分析していくために平成25年度の研究費を計画的に使用していく。 まず、24年度の研究成果を積極的に外部に発信していくために、研究代表者・分担者とともに学会発表にともなう研究経費を必要とする。平成25年度は、2学会(国内)での発表を予定し、26、27年度も継続的に外部に発信していく。それに関連する基盤づくりとして、国内の体育科教育に関する研究会やテキストデータの分析法のセミナー(数理システム社)に参加するなどして、蓄積データの分析制度を高めるための研究経費を必要とする。 次に、研究の成果を学内・外に発信するための教材開発(CD化)に関わる経費を必要とする。具体的には、投力・捕球力の向上を意図した体つくり運動教材のCDのパッケージ化を試み、同教材を小学校の体育授業や教員養成機関の講義などで活用できるものを制作する(100部)。教材のデータとして、投動作のデジタルイラスト、動きの動画、動きの説明書などは自作するが、CDの複製やパッケージなどの費用は外部発注を検討しており、そのための教材制作費を必要とする。また、教材を制作するにあたり、デジタルイラストの作成や投動作の動画撮影にともなう学生アルバイトの人件費、教材制作に必要な用具費、消耗品費などの経費を必要とする。 さらに、26年度の成果刊行物発行の準備も並行して行う為、出力用機器やそれにともなう備品などの経費を必要とする。
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