研究課題/領域番号 |
24531221
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
宇土 泰寛 椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (70465508)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換・ブルキナファソ・オーストラリア / ESD(持続発展教育) / 国際教育 / 宇宙船地球号 / ホールスクールアプローチ / 協同的な学び合い |
研究概要 |
平成24年度の研究で、以下のような研究成果を出すことができた。 まず地域や学校でのプロジェクト活動として、東山動物園と連携した日本メダカの飼育や校庭の棚田での稲作などを行い、学校でのESDへの取り組みが本格化してきた。さらにパリのユネスコ本部から「ユネスコスクール」の認定も受けることができた。 地球的課題としての水問題は、オーストラリアの小学校とアフリカのブルキナファソの小学校を訪問し、各校長と協議を進め、交流の土台ができた。8月にオーストラリアの水問題を探るために、現地の実態を調査し、塩害の問題が明らかになった。讃岐うどんの原料となる小麦が水問題とかかわっているなど、日本とも関係することが分かった。11月には、ブルキナファソへ行き、首都ワガドゥグーの水道システムと地方の水の状況を調査した。ダムや浄水場などたくさんのところを訪問することができた。地方の水問題となる浅井戸と深井戸の実態も把握することができた。 これらを元に、カリキュラム開発の基盤となる「地球時代の水リテラシー」を研究し、ユネスコスクールにおけるESD研究「宇宙船地球号・水と生活の旅」をテキストとしてまとめることができた。また、大陸間の交流のツールとなるITスキルと環境整備は、小学校が新校舎となり、一段と進み、大学との連携により、言葉が違ったり時差があっても交流しやすい方法を実験した。 最後に、3月に、ブルキナファソの駐日臨時大使や大使夫人、ブルキナファソから交流校のクルーゼ学園理事長を招待し、ブルキナファソとの交流事業をTSU・NA・GUとして、全校児童と保護者も参加し実施することができた。この交流事業でのパネルディスカッションは、テレビや新聞でも報じられた。ESDを基盤としたホールスクールアプローチは、教師の意識改革も含め、学校改革としても進展してきた。さらに、地域での新たなつながりも生み出してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画では、3カ国の交流を予定していたが、以下のような経緯で、アジア・アフリカ・ヨーロッパ・オセアニアの4大陸間交流の枠組みが出来てきた。 ブルキナファソとの経緯では、直接日本からブルキナファソを訪問し、交流相手校であるル・クルーゼ学園の水問題への取り組みを聞いたところ、このプロジェクトは、フランスのアルザス地方の学校と連携して実施されており、フランス担当者もブルキナファソまで来て、説明をしてくれた。そして、ブルキナファソ・フランスの協同プロジェクトに私たち日本も参加することを合意できた。そこで、日本とオーストラリアとの交流を説明し、これらを合わせると、4つの大陸の子どもたちがつながることを話すと、フランスの担当者もブルキナファソの担当者も、たいへん驚き、と同時にこの活動へ大いに賛同してくれた。このような建設的な交流が、1年目にも関わらず、3月の日本に来ての交流事業へとつながった。 日本の学校でも、単なる募金活動ではなく、子どもたちが「椙ニコGOODS」として鉛筆やバッグを業者と提携し、オリジナル製品を作り、その売り上げを支援に回すという交流支援活動を始めた。寄付教育の相手校として、この活動が認められ、名古屋フィルハーモニー交響楽団との共演という連携も進み、プロ集団と子どもたちが合唱や合奏を共演し、大勢の観衆が見守る中、市民会館のホールで演奏会を開き、その収入を地域のNPO団体等の活動へ回すというまさに参画型の市民性教育も実施できた。 このように子どもたちの活動がそれを取り巻く社会の人々とのネットワークへと次々につながったことも計画以上の進展の理由である。このつながりは、駐ブルキナファソ日本大使自身からの協力も得られ、現地でのダム等の調査でも、ブルキナファソのトップレベルの担当者がじかに案内をしてくれて、たいへんスムーズに行うことができたことにも現われている。
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今後の研究の推進方策 |
大陸間を越えたプロジェクト活動の枠組みはできてきたので、日本とオーストラリアとブルキナファソとフランスで、それぞれの学校教育課程に基づいて教育実践を展開をすると同時に、共通のテーマ「水と生活」をいよいよ子どもたちの学びへと具体化していく段階になってきた。 平成24年度で、日本とオーストラリアの水問題に関するテキストを比較し、「地球時代の水リテラシー」を明らかにしたので、これを学校の授業で実践化する。そのために、日本の教育課程の中での教科との関連や教材化を図ることも必要になる。そして、このような学校での実践レベルでの各国の教育課程を詳しく調査し、相互に共有化することが必要となる。また、各国の子どもたちが、自らの国や地球の水問題を学び合うことも重要である。 そのために、交流のツールとしてのITスキルを習得し、それぞれの学校のIT環境の整備を行うことも必要となる。一応、4カ国の学校とも、パソコンは常備されている。 また、オーストラリアとは、夏に、日本の子どもたちがオーストラリアを訪問し、ホームステイをするプログラムを持っているので、オーストラリアの学校で、共に学び合うための準備や協議が必要となる。 このように活動を進展させるためにも、子どもたちに調べさせるだけではなく、教師自身が、より水問題について知っておくことが重要である。そのためにも、引き続き、オーストラリアとブルキナファソの実態調査、フランスの学校のプロジェクト活動を知ることが今年度も必要である。このような研究や活動を通して、最終年度の研究発表につなげていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費として、カリキュラム開発費や教材化のための写真撮影や資料収集の費用、オーストラリア、ブルキナファソ、フランスへの実態調査費や学校訪問の費用が主としてかかることになる。 平成26年度は、愛知県名古屋市で、ESDのためのユネスコ世界会議が開催されるので、その時の研究発表や外国からの招待の費用を多く使うことになると思うので、できるだけ今年度も費用を抑え、最終年度に使えるようにしたい。
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