研究課題/領域番号 |
24531221
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
宇土 泰寛 椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (70465508)
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キーワード | 大陸間教育活動 / ESD / 国際教育 / 宇宙船地球号 / 水問題・水リテラシー / オーストラリア / ブルキナファソ / ユネスコスクール |
研究概要 |
平成25年度の研究で達成した、以下のような研究成果の概要を報告する。 本研究は、ESDを基盤とした子どもたちの大陸間交流活動とカリキュラム開発に関する研究であるが、日本側の椙山女学園大学附属小学校の交流活動とカリキュラム開発を大きく前進させることができた。今年度は、ホールスクールアプローチとして実践研究を図り、共通テーマ「水と生活」を掲げ、全教員が社会や理科だけではなく、国語、算数、音楽、体育、総合、英語等多くの教科や領域から、水に関するカリキュラムや教材開発を図り、公開研究会を行った。そこで、カリキュラムの全体構造図「ESDカレンダー」を作成し、全校合唱も行った。 地球の持続可能な開発をめざす国際教育の分野でも、大きな前進を図ることができた。まず、オーストラリアのグーレラル小学校とは、今年度は日本とオーストラリアの両小学校の合同のエクスカーションが実現した。一緒のバスに乗り、パースの水の供給源であるダムに行き、水問題についての環境学習と歴史を学ぶことができた。また、オーストラリアの水問題を把握するために、今年は東部のマレー川流域やブリスベーンを踏査し、より深く水問題を把握し、教材開発に役立てることができた。次に、ブルキナファソのル・クルーゼ学園小学校については、その取り組みがより明らかになった。プロジェクト学習で自らの国の水問題を丁寧に調べ、水の実態を明らかにし、衛生的な水を飲めない地域や人びとにはどのような病気が引き起こされるのか、その問題を解決するために、フランスの学校にも協力を呼び掛け、いろいろな取り組みを実施し、現在、きれいな水の出る衛生的な深井戸を掘るプロジェクトを行っているのである。 この取り組みを椙山小学校の教員や子どもたちに示し、日本側の活動も活性化することができた。まさに、地球的な課題を基盤としたユネスコスクールとしての取り組みを試みているのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に拡がったオーストラリアやブルキナファソとの教育交流をより深め、現地での協同的な教育プログラムや活動プロジェクトの共通理解などを図ることができたのは大きな進展であった。特に、オーストラリアの学校との「水問題」についてのエクスカーションによる合同の環境学習は大きな前進であった。これも、昨年度のパース近郊の水問題の調査結果による現地小学校への働きかけが大きかったと考える。ブルキナファソの学校に関しても、昨年、日本側から実際に現地を訪問し、水問題の実態を調査したり、日本にもブルキナファソの方をお呼びしてパネルディスカッションを実施したり、相互に訪問しあったことを契機に、その活動内容がより具体的になり、大陸を越えた交流活動ができたのである。 また、日本側の椙山小学校でも、公開研究会の実施により、水に関するカリキュラム開発や音楽の表現ステージなども見通しがつき、今後は教員集団による独自な展開が可能となった。ブルキナファソの楽士の学校訪問による民族音楽の演奏、日本側の子どもたちの日本舞踊や三味線・長唄、和太鼓演奏など、日本の伝統音楽の披露など、国際交流も実施できた。 しかし、これらをより子どもたちの学びにまで深めるためのテキストや教材作りなどについては、まだ現地調査や映像・情報収集に時間がかかっている段階である。また、各国の水に関するプロジェクト活動はかなり明らかになったが、日常的な教育活動の中での取り組みはまだ明らかでない点も多いのが現状である。これらを早急に実施する必要がある。 新たな研究活動のつながりとして、現地での調査を行いながら、日本人学校の教師にも情報収集において協力をいただいた。水については、日本人学校においても学習する内容になっているので、今回の研究が日本人学校でも大いに役立つことがわかった。さらに、日本人学校の現地理解や現地交流の学習にも役立つとのことだった。
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今後の研究の推進方策 |
地球時代の子どもたちの教育においては、21世紀の重要な地球的課題(グローバルイシュー)であり、それぞれの地域の課題(ローカルイシュー)でもある水問題を知り、その問題解決のために、努力しようとする宇宙船地球号の乗組員としての大陸間を越えた水リテラシーと実践的態度の育成を図ることは極めて重要なことである。そのために、カリキュラム開発とテキストの作成、指導法の研究開発が必要である。 これらを実現するために、現在関係しているオーストラリア、ブルキナファソ、フランスの小学校における水問題プロジェクトと各学校の教育課程の中の日常的な教科等の学習過程をより調査することが重要である。さらに、各国の地域の中の水に関する実態調査と教材開発のための研究調査を行い、各国の教育活動情報の共有化を図ることも必要である。 この研究を通して、地球的課題を大陸を越えた世界的なつながりの中で子どもたちが学びあうモデルを作りたいと考える。この学習モデルは、各国の学習にも役立つと同時に、世界中にある日本人学校の教育実践にも大いに役立つことがわかった。そして、日本の教育においてグローバル人材の育成がめざされているが、水問題などの地球的課題を扱うことは大切であり、また、日本人学校の現地理解教育や国際交流にも役立つのである。実際に、メキシコにある日本人学校と実践研究を行い、この方向が明確になった。今後の新たなステージでの大陸間教育交流としても進めていきたい。 上記の研究課題を明らかにするために、オーストラリア、フランス、ブルキナファソの学校訪問と地域調査、そして、日本人学校との協同研究の新たな可能性を探るために日本人学校訪問を実施したい。 また、これらの教育活動を広げるために、学会や国際理解教育の全国大会での発表などを行ったり、秋に名古屋で開催されるESDに関するユネスコ世界会議に関係した活動等にも役立てたりしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
附属小学校の校長も兼任しており、その立場上、学校経営にかかわる日程上の事情で、ブルキナファソとフランスの訪問を実施することができなかった。4月からは、大学専任になり、現地訪問をすることが可能だとわかったので、その使用額を次年度に回すことにした。 大陸間の教育交流をより具体的にするために、ブルキナファソとフランスの学校訪問や水問題の調査費用として使用する。また、本研究に協力する日本人学校を訪問し、今後の研究の拡大を図りたい。
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