本研究の目的は、「学習者の多読を促進できる教材の不足が『古典(古文)ばなれ』の一因である」との現状認識のもと、学習者が自身を重ね合わせやすい(=心的距離の近い)物語、且つ、学習者が未来に向けた規範にしやすい(=成長への意欲を喚起する)物語を集成したリーディング教材を高校現場向けに作成し、古文の多読を促す指導環境を整備することにある。すなわち、本研究の最終目標は、学習者自身が「環境」との関わり方に思いを致せるような〈困難を克服する子ども物語〉を、新資料も含めできる限り多く教材化し、申請者自身が効果を臨床的に検証した上で、現場の教員向けに公開できる体制を整えることである。なお、本研究でいう「教材」とは、「テキスト」・「注釈」・「指導例」とする。 研究期間の最終年度となる平成26年度は、これまで蓄積してきた成果の再検証を行い、具体的な「教材」として整理・編集した上で、公開できるようにした。なお、本年度中心に扱った鎌倉・室町期物語については、本文価値の評価が玉石混淆のジャンルもあり、編集に際しては慎重を期した。また、多く検定教科書に掲載されにくい作品を取り上げたため、高校の古文教材として適切であるか否か、教育学的見地からの検証も行った。 期間全体の研究成果については、「教材篇」・「論文篇」から成る「最終報告書」を参照されたいが、高校現場向けの「教材」としての利便性に鑑み、冊子版と電子データ版を作成し、教育現場へのフィードバックに努めている。
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