研究課題/領域番号 |
24531237
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
藤井 和子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (00272881)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 通級による指導 |
研究概要 |
平成24年度は、通級による指導を受ける言語障害のある児童に実施しているカリキュラムの現状と課題を明らかにすることを目的としている。まず、新潟県内の言語障害通級担当教師を対象に、特に吃音のある児童に対する指導を中心に、指導終了時までの複数年にわたって指導してきた内容、学級担任等との連携の実態等小学校6年間で実施しているカリキュラム及び中学校への引き継ぎの実態等について資料収集を行った。吃音のある児童の課題は在籍学級で生じやすく、対象児の教科の学習や対人関係の形成に影響を及ぼすことが考えられる。したがって、通級指導教室における自立活動の指導だけでなく、通常の学級における自立活動の指導が特に重要になるため、学級担任との協働による自立活動のカリキュラム開発を検討する上で重要な知見を得られるのではないかと考え実施したものである。次に、かつて小学校で通級による指導を受けていた吃音のある中学生を対象にした交流会実施に参画し、言語障害があることによる中学校生活における課題等小学校卒業後の状況把握を行った。これは、25年度に計画していた内容を一部前倒して行ったものである。これらの資料は、今後、小学校の6年間で実施すべきカリキュラムを検討する際、重要なデータとなる。さらに、自立活動のカリキュラムを開発する教師の職務意識及び指導の実態を明らかにするために、担当教師の実態、対象児の実態、指導の実態、職務に対する意識等について質問紙調査を実施した。誇りを持って仕事をしていきたいという思いがある一方、研修の機会が少なく専門性に自信が持てないこと、校内で十分な評価や理解が得られないことなど、学級担任と協働して自立活動の指導を実施していく上での困難があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は大きく3つの内容を行い、指導の実態及び言語障害通級担当教師の実態のおおよそを把握することが出来た。 言語障害通級担当教師は、時間的な制約の中、学級担任や保護者と定期的に情報交換を実施して多様化する教育的ニーズに応じた指導内容を決定し、教科指導場面における配慮を担任へ伝えていた。それだけではなく、学級担任とともに道徳等の授業を計画・実施して学級の児童の障害理解を促す機会を設定したり、校内研修を開催して校内教職員の言語障害及び指導に対する理解を求めている実態が明らかになった。つまり、言語障害通級担当教師は、学級担任だけではなく校内の全教職員に対して働きかけ、自立活動のカリキュラム作り及びその実施を図っている実態が明らかになったが、一方で、管理職や学級担任に通級による指導の意義や指導内容を理解してもらうことの困難さが大きな課題となっている状況も明らかになった。これらのことから、自立活動のカリキュラム開発には、管理職や学級担任との協働に関する力量が最も求められることが示唆された。発達障害等を併せ有する児童が通級児となっている現状も明らかとなり、通級児の多様な教育的ニーズに対応していくためには、学級担任等との協働に関する力量がさらに求められるのではないかと考えられた。以上、平成24年度に実施した調査結果より、多様な教育的ニーズのある通級児に実施している指導内容を明らかにすることができたとともに、自立活動のカリキュラム開発を行っていく上での課題に関する知見が得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年は、研究計画に従い、次の3点について取り組む。 1)中学校に設置されている言語・難聴通級指導教室、言語・難聴特別支援学級の教師を対象として、小学校からの引き継ぎの実態、通級児が小学校の通級指導教室で学習してきた内容及び達成状況、小学校で学習すべき内容、現在の指導目標及び指導内容、指導計画作成の現状、職務上の困難等について調査を実施する。2)調査協力の得られた中学生等かつて通級による指導を受けたことのある方々を対象に、通級指導教室で学習した内容、言語障害があることによる学校生活上の困難や困難解決の実態等について聞き取り調査を行う。3)小学校在籍中に通級指導を終了した児童の経過からカリキュラムの評価を行うため、通級担当教師と学級担任を対象として、通級指導教室で指導した内容、現在における学校生活上の困難の有無等について聞き取り調査を行う。 平成26年度は、学級担任や校内・外関係者と連携してカリキュラム改善を実施している言語障害通級担当教師の自立活動の実践を事例的に明らかにし、平成27年度は、通級による指導(言語障害)の自立活動カリキュラムの開発およびそれに求められる言語障害通級担当教師の力量についてまとめていく予定である。 また、学会等における成果発表、情報収集を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は、以下の通りである。1)調査の実施にかかわる研究費の使用:平成24年度は、全国の言語障害通級指導教室(一部難聴通級指導教室)設置校から300校を抽出して調査を行った。今年度は、昨年度の結果を踏まえ、調査対象を増やして調査を実施する予定である。さらに、中学校に設置されている言語・難聴通級指導教室(特別支援学級)を対象とした調査研究を実施する。これらの調査について、調査の準備及びデータ処理に関する謝金、発送費に使用する。2)研究発表及び情報収集にかかわる研究費の使用:成果発表及び言語障害通級指導教室におけるカリキュラム開発にかかわる情報収集のための旅費として研究費を使用する。3)物品費:関連図書、データ処理のためのパソコン関連消耗品、カリキュラム開発にかかわる教材作成費等として研究費を使用する。
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