研究課題/領域番号 |
24531238
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
村中 智彦 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (90293274)
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キーワード | 知的障害 / 自閉症 / 小集団指導 / チームティーチング |
研究概要 |
2年目の25年度では、前年度の臨床的研究の成果を踏まえて、知的障害児5名を対象とした小集団指導の臨床研究を継続して実施した。小集団指導において対象児同士のやりとり機会を設定し、指導者と対象児とのやりとりから対象児同士のやりとりに移行する際に生じる課題や配慮点を検討した。対象は小学校特別支援学級1~3学年で、ダウン症、精神発達遅滞、広汎性発達障害等の5名であった。大学研究センタープレールームにおいて、約8か月、週1回、約30分の指導を27回実施した。指導内容は特別支援学校「朝の会」の一斉授業を想定したはじまりの会で、はじめの挨拶、日付確認、天気確認、呼名、健康観察、予定確認、発表タイム、おわりの挨拶の課題内容で構成した。主指導者(MT)と補助指導者(ST)の2名で指導した。ベースライン(BL)及びプローブでは、MT(話し手)と対象児とのやりとりを形成した。指導I・IIでは、対象児に係・役割活動を設定し、対象児同士のやりとり機会を設定した。指導IIIでは、対象児同士のやりとりを促進するために話し手の対象児への予告指示、モデル提示、タッチパネル式端末による指示を指導した。その結果、対象児同士のやりとりになると、聞き手の応答行動のプロンプトレベルは低下し潜時は長くなること、その傾向は一斉指示機会で顕著であった。一斉指示機会では、聞き手全員に働きかけるため、話し手にとっては、誰に働きかけているのかの手がかりを提示しにくいこと、話し手の対象児は聞き手である他児の注目を喚起しないで指示することが関係していると考えられる。話し手の「せーの」の予告指示は、聞き手の応答行動を生起するタイミングをわかりやすくさせ、動作モデルの提示は聞き手の応答行動のモデルとして機能した。話し手のiPadの使用は、話し手の不明瞭な発音を補い、聞き手への指示の伝達を高めることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、2年目の大学研究センターを活用した臨床研究の成果によって、小集団指導における指導者の位置取りや役割、支援方法についての資料が得られた。26年度も継続して実施するが、25年度とは指導場面や課題内容を変更し、机上学習やゲーム・遊びの指導場面を設定する予定である。1、2年目の指導場面や課題内容の違いと、小集団指導における効果的なTTとの関連が分析可能である。 26年度では、1、2年目の臨床研究の成果を踏まえて、特別支援学校(知的障害)の授業場面を対象とした生態学的調査と、特別支援学校教師を対象とした質問紙調査を行う。これまでの臨床研究と調査研究を組み合わせて実施することで、指導者の効果的な位置取りや役割、支援方法についての踏み込んだ資料が得られると予測している。 以上のことから、(2)おおむね順調に進展していると自己点検による評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の26年度では、2年目に引き続き、大学研究センターにおいて、特別支援学校の授業をシミュレートした小集団指導を実施し、対象児同士のやりとり行動を高めるためのMT・STの位置取りや支援方法について検討する。 併せて、特別支援学校(知的障害)を対象に、生態学的調査と質問紙調査を行う予定である。生態学的調査では、小集団指導でのTTに関連して、MT・STの位置取りや指導者間のコミュニケーションを中心に非交流的な観察調査を行う。対象校は県内支援学校のうち3校程度、県外の2校程度とする。研究依頼と訪問による調査が実施可能で、無理のない対象数とする。小学部、中学部、高等部の特定の学級を、研究代表者1名と調査補助1~2名の大学院生でチームを構成し、観察者ごとに対象を定めた組織的観察を行う。対象場面は児童生徒が3~4名以上の小集団指導で複数指導者が支援を行うTTを実施している授業とし、観察者が指導者や児童生徒に働きかけを行わない非交流的観察調査を行う。評価チェックシートを用いて、(a)指導者の支援行動と、 (b)対象児の課題遂行と逸脱行動の生起状況を記録し、指導場面ごとにTTにおけるMT・STの位置取りや指導者間のコミュニケーションについてパターン分析を行い、対象児の課題遂行、逸脱行動の生起状況や障害種別や程度との関連を分析する。 質問紙調査では、県内外の特別支援学校教師を対象に、授業場面におけるMT・STの位置取りや指導者間のコミュニケーション、児童生徒の課題遂行を促進し、逸脱行動の生起を防ぐことに作用するTTの条件に関する質問紙(アンケート)を作成し、郵送調査を実施する。各学校、小中高の学部間の結果を比較検討し、効果的なTTの条件、特にMT・STの位置取りと指導者間のコミュニケーション方法の観点に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、当初予定していた特別支援学校(知的障害)の生態学的調査を実施しなかったため、特に旅費等が予定していた使用額よりも少なく、1、2年目で計画していた予算額よりも下回った。 26年度は、大学での臨床研究と学校での生態学的調査、質問紙調査を実施するために、前年度までの未使用額(148,895円)と26年度の使用額(1,100,000円)を計画的に使用する予定である。
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