研究課題/領域番号 |
24531246
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
越野 和之 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (90252824)
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研究分担者 |
丸山 啓史 京都教育大学, 教育学部, 講師 (00452368)
窪田 知子 滋賀大学, 教育学部, 講師 (30599254)
河合 隆平 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (40422654)
田中 智子 佛教大学, 社会福祉学部, 講師 (60413415)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インクルージョン / 貧困と養育困難 |
研究概要 |
本研究は、障害児家族における生活および養育・教育上の諸困難の実態を実証的に把握することを通じて、現代社会における「貧困」が特別支援教育においていかなる形で顕在化しているかを明らかにし、それらを解決するための学校教育の課題について検証することを目的とする。具体的には、3年間で以下の4つの研究作業を計画した。 ①障害児の生活・養育困難および「障害児の貧困」認識に関する実態調査。②各種手当て・福祉制度の成立過程にみる障害児家族への問題認識の歴史的検討。③地方における障害児家族の生活・養育困難に関する実態調査 ④学校の貧困対策と障害児問題に関する海外動向の調査。 平成24年度は、「障害児の貧困」認識に関する実態調査(上記①)を中心に取り組み、特別支援学校教員へのインタビューを通して、障害のある子どもたちの学校教育の現場で、家庭環境の厳しさや教育活動の困難さがいかなる形で顕在化しているのかを検討した。その結果の一部は、日本特別ニーズ教育学会第18回研究大会(2012.10)で「障害児の生活・養育困難および「障害児の貧困」認識に関する実態調査―教員へのインタビュー調査の中間報告―」として中間報告を行った。 このほか、日本教育学会第71回大会(2012.8)でラウンドテーブル「障害児家族の貧困問題と学校教育の課題」を企画し、児童養護問題や教育社会学などの多様な視点から、障害のある場合の子どもと家族の貧困を明らかにする視点を検討した。 また、障害児家族の生活困難・貧困問題の研究に先鞭をつけた藤原里佐氏(北星学園大学)を迎えての研究会(2012.12)を開催し、障害児家族における生活困難や不利の複合的な実態とその生成過程を通して、子どもと家族への支援の課題について議論を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の具体的な研究作業計画は、①障害児の生活・養育困難および「障害児の貧困」認識に関する実態調査、②各種手当て・福祉制度の成立過程にみる障害児家族への問題認識の歴史的検討、③地方における障害児家族の生活・養育困難に関する実態調査 ④学校の貧困対策と障害児問題に関する海外動向の調査の4点である。 このうち、平成24年度に実施予定であった①(「障害児の貧困」認識に関する実態調査)については、当初計画に即して着実に実施し、中間報告としての学会発表も行うことができた(なお、第二次報告を平成25年度の日本教育学会等報告予定)。 また、②についても基礎的な資料収集が進行中であること、③および④についても、フィールドの選定および予備的な折衝は実施済みであり、上記の通り自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降の研究課題及び研究計画は以下の通り。 ①地方における社会資源の整備状況と障害児家族の生活・養育困難に関する実態調査:本調査では、障害児の養育に関わる社会資源が十分整備されていないとみられる地域における学校教育および障害児福祉関係職員、保護者等への質問紙調査およびインタビュー調査を通して、当該地域における障害児家族の生活困難と養育上の課題を明らかにする。具体的には、石川県能登地域、和歌山県新宮東牟婁地域、鹿児島県大島地域をフィールドとする。 ②学校の貧困対策と障害児問題に関する海外動向の調査:子どもの貧困の解決を重点政策に掲げてきたイギリスにおいて、学校を拠点として社会的不利益層への対応を進めてきたエクステンディッド・スクール(Extended School)について、障害のある子どもや貧困家庭の子どもへの対応の実態・成果・課題を明らかにするために、イギリスにおける関係者へのインタビュー調査を行う。 ③各種手当て・福祉制度の成立過程にみる障害児家族への問題認識の歴史的検討:障害のある子どもや家族に対する各種手当や福祉制度の成立過程について歴史的考察を行なう。特別児童扶養手当や障害児福祉手当、就学奨励費などの諸手当・制度の成立・改定の過程において、障害児の介護にかかる経済的負担や経済的損失をどのように勘案したのかを、家庭の養育・教育におけるジェンダー的観点に着目しながら検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費は、各種経費の節約および科学研究費以外の研究費の活用等によって生み出したものである。 このような対応を行ったのは、平成25年度における「地方における社会資源の整備状況と障害児家族の生活・養育困難に関する実態調査」(地方調査)にかかる費用(とりわけ旅費等)の不足分を補填する必要があると判断したからであり、平成25年度請求の研究費とあわせて、主として地方調査の旅費等に使用する計画である。
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