研究課題/領域番号 |
24531247
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
江田 裕介 和歌山大学, 教育学部, 教授 (00304171)
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研究分担者 |
武田 鉄郎 和歌山大学, 教育学部, 教授 (50280574)
豊田 充崇 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (60346327)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 特別支援教育 / ICT / 情報モラル / メディアリテラシー |
研究概要 |
特別支援教育にICTを導入し、教材・教具として活用を図るとともに、情報モラルの観点から児童のメディアリテラシーを高める研究を行った。具体的には、特別支援学校(知的障害)と特別支援学級へ携帯情報端末(タブレット・コンピュータ等)を導入し、各教科の授業や個別の課題指導で実践研究を行い、教育現場と連携しながらICTの利用効果を検証した。長期休業期間中には家庭で同じ機器を利用し、学習の自主性及び継続性の向上を図った。機器の導入に際して、児童の情報モラルに対する意識を高めるため、利用のルールを教員や保護者と話し合うプロセスを定め、インターネット上のコミュニケーションにおける適切な表現や問題への対処スキルに関して指導を行った。 これまで特別支援学校におけるICTの利用は、コンピュータを集めた特別教室へ移動し、限られた目的と時間で行われる傾向があった。しかし、一人一人の児童に情報端末を与え、操作環境を個別に設定することで、平常の授業でも効果的な学習支援のツールとして利用できることが明らかになった。また、文字の読み書きが未定着の重度障害児童であっても、多様な教材コンテンツが利用可能であり、対象範囲をひろげることができる。 教育効果としては、①興味・感心や集中力を高める動機づけの効果がある他に、②発達や障害の個人差に合わせて学習条件を細かくアレンジできることや、③反応の正誤のフィードバックが即時、個別に行われることで、障害のある児童でも自習が可能となる等の効果がみられた。文字の読み書きと数量の学習についてテストの得点を比較すると、機器の導入後に成績が向上し、定着率も高まった。一方、知的障害児の初期の文字学習において画面に表示されるフォントの影響があり、多様な刺激に反応して、かえって学習が妨げられる場合もあるなど問題点もみられた。機器の利用環境の個別化、最適化が重要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域の特別支援学校や特別支援学級と連携し、ICTを実際の授業へ導入した。長期な実践研究を通じて、教材・教具として機器の利用する方法や、その効果について具体的に検証することができた。その経過で、児童の発達や障害の個人差に応じて操作環境を個別に配慮することが重要であることを示し、効果的な課題設定を提案すると同時に、学習課題と操作条件との関係を明らかにした。また研究の経過で、各学校では、実践研究で連携する教室の担当教員のICT活用に関する技能と意識が向上した。 情報モラルの指導について、児童の発達年齢が低い段階では、一般の教科「情報」の授業のように、ネットワークの危険性を教える予防的内容は難しく、具体的な機器の利用を通じて個人のルールを児童と話し合うことが効果的であった。学校と家庭が連携し、児童の実態に合わせて利用のルールを定めていく情報モラルの指導のモデルを示した。
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今後の研究の推進方策 |
実践研究で連携する教育現場において、各学級で教員のICT活用の技能が高まり、また一人一人の児童が携帯情報端末を個別に利用できるようになっていることから、ICTの活用を集団の取り組へと発展させる条件が整ってきたと考える。今後は、各教科の授業や個別の課題学習から、さらに交流及び共同の学習へとICTの活用を広げていく計画である。特別支援学校の中では、障害の領域の異なる学級どうしの交流や共同学習、訪問学級の児童との交流などへ応用を試みる。小学校や中学校の特別支援学級では、通常の学級の児童生徒との交流及び共同の学習を行い、通級の指導における効果的なICTの利用方法についても検討したい。各学校でICT活用に関する集団の取り組みが進んだ段階では、さらに学校間の交流や共同学習を展開したい。 ICT利用の実践研究に関する情報を共有し、交流及び共同の学習へと進めていくため、研究連携校の協力教員を中心とした研究協議会を隔月程度で開催する。特別支援教育におけるICT活用と交流及び共同の学習に関する実態調査をこの研究協議会で実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実践研究において児童生徒が教室で個別に機器を利用できるよう携帯情報端末(タブレット・コンピュータ等)の台数を確保する必要がある。また各学校が保有するデジタル黒板やTV会議システム等、既設のICT環境と接続しながら、より効果的な実践研究の展開を目指したい。そのため次年度もハードウェアに充実に予算をあてる必要がある。 研究協議会(年5回程度)の開催にともなう研究協力者の旅費、会議費用として研究費の20%程度が見込まれる。また調査と技術的なサポートのため研究補助者への謝金を10~15%程度予定する。
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