特別支援学校及び小学校、中学校の特別支援学級において、障害を有する児童生徒の学習やコミュニケーションを拡大、支援するため、授業におけるICTの活用を図り、その効果を検証した。地域の学校と連携しながら、児童生徒が個別にタブレットPCを利用できるように学習環境を整え、①訪問学級の児童生徒における交流及び共同学習での応用や、②知的障害生徒のアクティブラーニングへの導入、③重度重複障害生徒のコミュニケーションツールとしての活用など多様な実践研究を展開した。 また、特別支援教育に関わる教員が、ICTの教育的な利用に対してどのような意識を有しているか調査を実施した。アンケートの回答を得点化し、因子分析を行った結果、「情報化への不安」「利用効果への期待」「学びの意欲」「指導への自信」の4つの因子が抽出された。教師はICTの導入に強い期待と意欲をもつ一方、障害のある児童生徒が活動を機器に頼ることや、心身への影響に対する不安を示した。また「指導の自信」の因子得点が低かった。しかしテレビ会議システムを利用した研修を経て、再調査を行ったところ、各因子の得点が有意に向上した。特別支援教育におけるICT活用の推進には教師に対する研修システムの構築が特に重要であると考えられる。 現在の中国の特別支援学校におけるICTの利用状況と教師の指導力に関する国際比較調査を行った。その結果、中国では電子黒板など教師が指導に用いる機器が日本より高率に普及している一方、児童生徒が学習活動で個別に用いる機器はまだ整備が進んでいない。その状況に対応してICT活用指導力も「授業中にICTを活用して指導する能力」は中国の教員が高く、「児童のICT活用を指導する能力」は日本の教員が高かった。「情報モラルなどを指導する能力」は両国で得点が低く課題となっていることが示された。
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