研究課題/領域番号 |
24531252
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
武蔵 博文 香川大学, 教育学部, 教授 (00262486)
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研究分担者 |
坂井 聡 香川大学, 教育学部, 准教授 (90403766)
明翫 光宜 中京大学, 心理学部, 講師 (70469021)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 特別支援教育 / 人間関係の形成 / 感情調整 / 認知行動療法 / 積極的行動支援 / 支援ツール / 発達障害 / 知的障害 |
研究概要 |
発達障害児者の社会参加を推進するために、評価バッテリーの実用化(課題1)、支援プログラムのコンテンツの充実(課題2)に取り組んだ。 課題1:評価バッテリーの実用化:これまで開発してきた社会的スキルに関する評価尺度をまとめて評価バッテリーとすることをめざした。まず、マトソン年少者社会的スキル尺度(MESSY)の再標準化の結果をまとめ、先行研究(荒川ら,1999)や海外の研究(Teodoroら,2005)等との比較をおこなった。ADHDやASDの児童に対して、定期的にMESSYや社会的スキルスキル尺度、ストレス反応尺度などによる評価を実施して、その傾向・パターンについて検討を加えた。さらに、児童を対象とした社会的スキル、レジリエンス、問題行動、不安、ストレス症状等の評価方法を検討した。これらをもとに、発達障害児を対象とした社会的スキルと情動・ストレス評価尺度の作成に向けての準備を整えた。 課題2:感情の理解と調整の支援プログラムのコンテンツの充実:SSTによる実証研究を継続して、支援プログラムのコンテンツを充実させ、さらにその改善を図った。これまで実践したSSTでは様々な指導教材を作成してきたが、それらをまとめてプログラムの学習のためのワークブックを作成した。それを実際のSST教室において試行し改善することにより、コンテンツとしての質を高めた。ワークブックは、感情の理解、感情の調整のそれぞれについて、ワークシート、日記カード、チャレンジカード、プレゼン、解説と指導案などから成る。さらに、学習した対処法の般化と定着のために、子どもに身近な指導教材を作成することとした。ロールプレイ用のシナリオ、感情の対処法を題材にしたカードゲーム、日常的なトラブルを題材にしたすごろくゲーム等を試作した。今後、実用的に使用できるように、内容の見直しを行っていく予定でいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題1:評価バッテリーに関しては、MESSYをもとに、対象児童による自己評価法を開発してきた。感情の理解と調整だけではなく、問題行動やレジリエンス等を考慮に入れた評価方法を検討する必要性が示唆された。さらに、発達障害児の生活場面で生じる対人的なトラブル場面を考慮に入れた評価を検討すること、そのときの心理状態を反映しやすい評価やSSTでの学習効果を反映しやすい評価などに分けて検討を重ねることも課題とされた。今年度は、国内外の質問紙を検討するなどの準備をする段階に留まった。 課題2:プログラムコンテンツに関しては、感情的困難場面、感情調整の対処法等の支援内容について、健常児、発達障害児を対象に聞き取りを行ったが、その結果をまとめるのに予想以上に時間を要した。年齢や学年を考慮するとともに、場面(学校での先生や友だち、家庭で親や兄弟、地域の人)に応じた困難場面さらに対処法を整理し検討した。抽出した場面に応じて実行可能な対処の仕方について、なかなか成案を得られず、検討の繰り返しとなった。そのために、プログラムの学習のためのワークブックを作成することに続いて取り組む予定としていた、学習した対処法の般化と定着のための指導教材は、いくつかの試用版を作成する段階に留まった。 さらに、今後、課題3としてICT機器を活用することを計画しているが、機器の違いやOSのバージョンアップ、ソフトの問題などが大きく、どのような活用方法を検討すべきか、再度検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、評価バッテリーの実用化(課題1)、および感情の理解と調整の支援プログラムのコンテンツの充実(課題2)に重点をおいて進める。 課題1については、発達障害児が自己評価を行うのに適するようにMESSYの短縮版を作成する。MESSYの4因子間の関係を分析し、それとともに、他の評価尺度との評価バッテリーについては実用的な評価方法の組み合わせを検討したい。これらの評価法を用いて、ADHDやASD児に対して繰り返して評価を行い、その傾向やパターンの分析を続ける。その上で、これまでは怒りや不安という不快感情の状態を把握することを主眼としてきたが、より広く、精神的な耐性・回復力も含んだ評価の在り方を検討する。 課題2については、これまで「感情の理解と調整を支援するプログラム」の一部として扱っていた「トラブル状況への対処」を独立させて、「トラブル状況への対処と解決策選択のためのプログラム」とする。そのため、支援プログラム全体の構成や内容を再検討する。さらに、2つのプログラムそれぞれのコンテンツを開発することを平行して進める。とくに、「トラブル状況への対処と解決策選択のためのプログラム」についてのワークシート、カイケツカード、プレゼン、解説と指導案などをまとめる。また、前年度に作成した「学習した対処法の般化と定着のための指導教材」を充実させて改良を加える。学習した内容を発達障害児が自分で反復練習できるように、カードゲーム、すごろくゲームとして、体裁やルール・手順、カードやすごろく盤などを整える。今年度に実施する予定の次回のSST教室において試行を重ねる。
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次年度の研究費の使用計画 |
課題1、課題2の実行・充実に向けて効果的に研究費を使用する計画である。とくに課題2については、感情の調整の支援プログラムの内容を充実させるために、バイオフィードバックを取り入れる予定でおり、そのために子どもでも携帯して簡便に使用でき、フィードバックできる機器の購入を検討している。また、コンテンツを充実させるために、画像やビデオを分析するパーソナルコンピュータの購入も予定している。さらに、作成したコンテンツを提示するためのICT機器を追加して購入し、SSTの中で役立てる予定である。
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