研究課題/領域番号 |
24531252
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
武蔵 博文 香川大学, 教育学部, 教授 (00262486)
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研究分担者 |
坂井 聡 香川大学, 教育学部, 教授 (90403766)
明翫 光宜 中京大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70469021)
石川 健介 金沢工業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90319038)
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キーワード | 特別支援教育 / 人間関係の形成 / 感情調整 / 認知行動療法 / 積極的行動支援 / 支援ツール / 発達障害 / 知的障害 |
研究概要 |
ソーシャルスキル支援ツールの実用化に向けて、小学校の特別支援学級あるいは通級指導教室等での利用を想定して、評価バッテリーの実用化(課題1)、支援プログラムのコンテンツの充実(課題2)、ICTの利活用(課題3)に取り組んだ。 評価バッテリーの実用化(課題1)では、これまで感情状態の評価尺度、社会的スキル尺度等について検討を進めてきた。本年度は実用化に向けて、既存の評価尺度との重複を避け、現場で簡便に実行しやすくするために、3つの内容に焦点を当ててまとめ直した。子ども自身が感情や情動を含んだ自分の社会的スキルを評価する尺度、自分の怒りや不安の不快感情の状態を評価する尺度、怒りや不安の不快感情への対応を考え出す力を評価する尺度である。 支援プログラムのコンテンツの充実(課題2)では、昨年度に作成した指導案、プレゼン、ワークブックを使用してSSTでの実証研究を行い、コンテンツの充実と改善に努めた。感情困難場面の新たな課題を検討して、ワークシートを作成する等の充実を図るとともに、口頭による説明や文章の読み取りを最小限として、内容が児童に分かりやすくなるように改善を続けた。また、リラクゼーションの方法として、emWave2を用いたバイオフィードバック法を取り入れるとともに、感情困難場面での対処法を題材としたカードゲームを新たに作成して指導を実施した。 ICTの利活用(課題3)については、これまで電子黒板等を活用して、感情の理解や調整について視覚的に説明する、対処法の例示を視覚的に提示し練習する、児童の発表を視覚的に全員で共有する等の方法を検討してきた。理解の程度や経験の度合いが異なる対象児童に対応しきれず、対処法の練習を十分に行えなかった。そこで、支援プログラムの内容を、携帯情報端末上のコンテンツまたはアプリとして活用することを計画した。アプリ化に向けてその仕様を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
評価バッテリーの実用化(課題1)は、評価する内容を絞ったことにより、評価方法として実用度を高めることができた。それぞれの尺度について、目的と内容の説明、実施方法、アンケート用紙、採点と解釈、利用の方法をまとめ、現場で実施できる体裁を整えた。評価方法は、児童が自己の感情や情動について自己評価する、対処法を自己記入するものである。今年度は実施できる状況を整える段階に留まった。 支援プログラムのコンテンツの充実(課題2)は、作成したワークブックをSSTにおいて実施した際に、児童が注意を持続できず、内容を十分に理解できない状況が何度も起こった。そこで、ワークシートの文章表記や表現を改良することを繰り返した。さらに児童の実態に合わせて、コンテンツの内容を変更したり新たに作成したりした。感情困難場面について具体的な対処法を検討し直してイラストを作成する等を行った。 バイオフィードバックは、どの対象児童も、emWave2を使った練習に興味を示し進んで取り組む様子が見られた。ただし、練習したリラクゼーション法を実際に学校や家庭で行ったという報告は得られなかった。感情の対処法をカードゲーム化したことで、感情の困難場面に対する対処法を繰り返して練習することができた。ルールをさらに検討すること、ゲームの内容を充実させることが必要であった。対処法について繰り返して練習することは可能であったが、その効果について判断することは難しかった。 ICTの利活用(課題3)については、支援プログラムの内容を携帯情報端末のアプリとするために、その仕様を検討したが、多くの課題があり時間を要した。携帯情報端末の機種の間の相違、メモリ容量・アプリプログラムの制限、端末の操作方法、アプリの提供形態、データの管理等について課題があった。アプリ開発会社とのやりとり、事務とのやりとりに多くの時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度のまとめを見据えて、支援プログラムのコンテンツの充実(課題2)とICT利活用(課題3)を重点におき研究を進める。これまでは、主に大学附属の相談機関においてSSTを実施してきたが、開発した支援プログラムを小学校特別支援学級や通級による指導、民間のNPO法人の児童ディサービス事業等に提供してその効果を検討する。 これまでに開発した支援プログラムは、コンテンツの充実を図るにつれて、内容が多く、指導に時間がかかるものとなってしまった。そこで、これまでに開発した「感情の理解と調整を支援するプログラム」を「感情の理解のプログラム」「感情の調整のプログラム」「対人的トラブルに対する予防的対処プログラム」の3つのプログラムから成るものとしてまとめ直す。 支援プログラムのコンテンツの充実(課題2)については、これまでの実証研究で試行した結果をもとに、発達障害児の特性に合わせ、指導案、指導教材、説明資料の修正を図っていく。さらに、支援プログラムの内容をキャラクター化したイラストを、これまでのものに加えて新たに増やし、指導教材の充実・改良を重ねる予定である。また、上記した3つの支援プログラムの中心的な課題内容に加えて、児童の実態に合わせて、様々な展開ができるようにプログラムの基礎編や展開編を検討して充実する。 ICT利活用(課題3)は、支援プログラムを携帯情報端末のアプリとするための、仕様をほぼ定めることができた段階である。Web関連システム開発デザイン会社と協議を進めて、携帯情報端末の機種に依存しないWebアプリとして作成する予定である。アプリのデザイン・フローチャートを確認した後、携帯情報端末での使用を前提とした画面遷移図を作成し、その最終案をもとに、アプリ開発を行い、校正確認に進む予定である。Webアプリとして試用版を運用し、携帯情報端末での試行を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
支援プログラムを携帯情報端末のアプリとするための仕様を定めるために、多くの課題と時間を要した。そのために年度内に予算を執行するに至らなかった。 課題3の実行に向けて重点的に研究費を使用する計画である。不快感情への対処法を練習するための教材をWebアプリとして作成し、その試用版を運用する予定である。作成したWebアプリを試行するために携帯情報端末を追加して購入し、SSTの中で役立てる予定である。
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