研究実績の概要 |
本研究ではまず実験的アプローチとして、ASD児者における外部入力刺激に応じたDMNの抑制機構がどのように関わっているかについて検証できるタスクを新規に作成してNIRSにより解析し検証した。健康なボランティア被験者11名(21~26歳、男性3名、女性8名:平均年齢21.6歳)とASD者5 名(13歳~25歳、すべて男性)を対象とし、タスク遂行中持続的に16チャンネルNIRS(Spectratech OEG-16)を装着してoxy-,deoxy-,total- Hb濃度を測定した。その結果、oxy-Hb濃度の平均値において、ボランティア被験者ではDMNからベースラインに切り替わる際のoxy-Hb濃度の速やかな上昇が見られ、逆にベースラインからDMNに切り替わる際のoxy-Hb濃度の反応性の減少が見られたが、ASD者においてはこの傾向が観察されず、不規則なoxy-Hb濃度変化がタスク遂行中に認められた。現在、この差異を数値的に評価できる計算式を開発し、これを用いた比較検討を行っている。 さらに、これまで申請者が得た種々の知見をもとにして、小学校特別支援学級において、ASD児者における効率的な前頭葉機能の賦活を目的とする実践的介入を一定期間行い、それをNIRSを用いて評価した。被験者児童6名における旗揚げ施行時の10秒間の平均値を比較したところ、旗揚げを施行した際に、前頭葉血流量が右側優位に増加した児童が、6名中4名に観察された。さらに、6人の平均値では右側優位の前頭葉賦活が観察された。このことより、障害のある児においても一般的に空間認知を賦活すると考えられている課題を施行する際には右側前頭葉優位の賦活が起こる傾向があることが示唆された。今後、この左右差についてさらに検討を進める予定である。
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