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2013 年度 実施状況報告書

発達障害児の漢字の読み書き能力および障害メカニズムに関する認知神経心理学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24531263
研究機関東北文化学園大学

研究代表者

柴 玲子  東北文化学園大学, 医療福祉学部, その他 (70406908)

研究分担者 井上 勝夫  北里大学, 医学部, 講師 (10439119)
石坂 郁代  北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (70333515)
秦 若菜  北里大学, 医療衛生学部, 助教 (50448958)
藤原 加奈江  東北文化学園大学, 医療福祉学部, 教授 (20468325)
榊原 七重  北里大学, 医療衛生学部, 講師 (80445189)
キーワード読み書き障害 / 漢字音読 / 書字障害 / 発達障害
研究概要

1.前年度に引き続き発達障害児へのデータ収集を行う:発達障害児へのデータ収集は、平成25年4月~平成26年3月の期間に、北里大学病院精神神経科を受診した被験児8名に研究を実施した(被験児総数は32名)。
2.得られたデータを順次分析し、データベース化した上で統計的分析を行う:     (1)認知機能検査および読み書き検査分析:現在までの対象のWISC-IVのFSIQは、56-129(中央値84)だった。読み書き検査の分析は、読み書き読解ともに50%程度の遅れがあり、書きに顕著な遅れを伴う児が多いことがわかった。(2)保護者アンケートの分析:全対象において、83.3%の保護者が「学力(国語)」に遅れがあると回答。主診断別にみると、ADHDは「早く書けるが雑」が特徴で、ASDは「早く読めるが理解していない」が特徴、LDは「形が似ている漢字の書き誤りが多い」など読み書きの処理過程の困難さが特徴だった。(3)視力検査の結果、および影響:研究同意のあった8名に検査を実施、分析中である。3.発達障害の先行研究を分析し、本研究で得たデータと比較し、さらに健常児との相違、精神医学的診断間との相違を検討する: 漢字読み検査の分析は、語属性(典型語、非典型語、非語)を操作した漢字検査を実施した結果、いずれの主診断においても高親密度典型語の成績は良かったが、ASDでは、典型語において親密度効果(高親密度語に比して低親密度語で成績が低くなる)が現れず、高親密度語において一貫性効果(典型語に比して非典型語の成績が低くなる)が現れなかった。
4.後天性失読の先行研究を分析し、本研究で得たデータと比較し、成人失読者との相違を検討する:漢字読み検査において、分析中である
5.結果のまとめを行い、発達性ディスレクシア研究会などで学会発表を行う。:発表準備および論文執筆準備中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)データ収集:予定対象数55名に対して、研究同意を得ている被験児36名、そのうち検査実施済は32名となり、おおむね順調である。対象内訳は、PDD(ASD)、ADHDが多いため、今後調整を検討していく。
(2)読み書き障害の重症度、およびタイプ分類:データ分析は順次行い、データベース化している。既存の検査を「遅れ」「顕著な遅れ」に大別すること、漢字読み検査の質的な分析をすることで、重症度判定および読み障害のサブタイプ類型化が可能になってきているなど、おおむね順調である。他の読み書き検査の結果を分析していく予定であるが、データ分析には時間と正確性が必要なため、研究協力者を2名追加し、分析を行う予定である。
(3)読み書き障害の要因(予測因子)の検討:認知検査の結果をデータベース化して、予測因子を分析している。それにより、指導法を提案することが可能になるなど、おおむね順調である。例えば、検出された読み障害のサブタイプである「表象失読タイプ」の認知検査の結果は、いずれも平均範囲なため、良好な意味を利用した語彙指導が考えられ、「混合タイプ」はすべての認知検査が平均を下回ったため、認知全体を考えた言語発達指導が有効だと思われる。今後は、指導した結果から指導法を検討する必要があると思われる。
視力検査のデータをさらに分析し、影響を検討する。
(4)すでに収集した健常児データとの共通点や相違点、医学的診断との関連性:主診断別の結果を分析、ADHD、ASD、LD、それぞれの特徴が示唆された。分析は継続しており、おおむね順調である。今後、統計的な解析を実施する予定である。

今後の研究の推進方策

1.前年度に引き続き発達障害児へのデータ収集を行う:対象数については、平成24年度、25年度の対象内訳より、最終年度の対象数の検討、および学年(1年~6年生)、精神医学的診断(特異的発達障害、学習障害、自閉症スペクトラム障害、多動性障害)のバランスを再検討し、特異的発達障害、学習障害の割合を増やす予定(柴、井上、藤原、和田)。
2.得られたデータを順次分析し、データベース化した上で統計的分析(分散分析など)を行う(柴、データ入力協力者)。総合的な読み書き検査は、読みは既存の検査、および掘り下げ検査の結果の一致点、相違点の分析をし、書字は、誤り分析をさらに検討する。読解については、聴覚的理解力検査との関係を検討する。また総合的な読み書き検査と認知検査との関係、主診断別の傾向を統計的に分析する予定である(柴、研究協力者)。
3.発達障害の先行研究を分析し、本研究で得たデータと比較し、さらに健常児との相違、精神医学的診断間との相違を検討する(柴、井上、藤原、和田、榊原)。
4.後天性失読の先行研究を分析し、本研究で得たデータと比較し、成人失読者との相違を検討する(柴)。5.成人、小児の専門家より意見を聞き、考察を行う。
6.結果のまとめを行い、日本コミュニケーション障害学会、発達性ディスレクシア研究会などで学会発表、論文発表を行う。

次年度の研究費の使用計画

前年度に引き続き、予定対象数に到達するためのデータ収集およびデータ入力、分析を継続し、その考察を行い、結果の発表を行うため、
1)データ収集に使用する検査記録用紙(ReadingTest、STRAW、SCTAWなど)および記録メディア媒体(外付けハードディスク、DVDなど)の費用、2)データ入力および分析のためのデータ入力協力者への謝礼費、分析ソフト費、3)発達障害および後天性失読の先行研究の分析を行うため、専門図書費、文献費用、および専門家から指導を得るための、調査研究旅費、専門的知識の提供費、4)結果の発表をするための学会発表費、論文構成費

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] The feature of high reading ability in high-functioning pervasive developmental disorders of childhood : Analysis of the K-ABC and WISC-3rd assessment.2014

    • 著者名/発表者名
      Inoue, K., Wada, M., Natsuyama, T., Syunsuke Kamitani, Hitoshi Miyaoka
    • 雑誌名

      Research in Autism Spectrum Disorders

      巻: 8 ページ: 25-30

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 5. 落ち着きがない、不注意な行動が多い―ADHD(注意欠如/多動性障害).2014

    • 著者名/発表者名
      井上勝夫
    • 雑誌名

      児童心理

      巻: 68 ページ: 110-114

  • [雑誌論文] 3. 支援に活かす自閉症スペクトラム障害の多次元的な特性評価・診断.2013

    • 著者名/発表者名
      井上勝夫
    • 雑誌名

      精神科診断学

      巻: 6 ページ: 44-49

  • [学会発表] WISC-4th 下位検査評価内容の実証的検討2013

    • 著者名/発表者名
      井上勝夫、和田真理子、神谷俊介ほか
    • 学会等名
      第54回日本児童青年精神医学会総会
    • 発表場所
      札幌市
    • 年月日
      20131010-20131012
  • [学会発表] 言語理解、文字理解を促す指導

    • 著者名/発表者名
      柴玲子
    • 学会等名
      川崎小学校教室事例研究会
    • 発表場所
      川崎市立川崎小学校
  • [学会発表] ことばの発達とこどもへの支援

    • 著者名/発表者名
      中村達也、柴玲子、井上史子他
    • 学会等名
      島田療育センター発達障害児支援室(からふる)研修会
    • 発表場所
      島田療育センターはちおうじ
  • [学会発表] 「学齢期における発達障害に関する最近の話題」

    • 著者名/発表者名
      井上勝夫
    • 学会等名
      相模原市発達障害支援センター研修会
    • 発表場所
      神奈川県相模原市

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公開日: 2015-05-28  

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