研究実績の概要 |
発達性dyslexia児の英語学習支援には,第一に評価が重要である。評価は認知神経心理学的モデルに基づいて評価バッテリーを選定し,日本語と英語の双方の言語に行って読みの状態を比較検討する。日本語の評価は,聴覚的音韻分析と音韻入力レキシコンに関しては音韻認識課題(音韻削除,逆唱課題),視覚的文字分析と文字入力レキシコンに関しては単音・単語・単文音読課題を実施する。意味レキシコンに関しては抽象語理解力検査と教研式読書力診断検査を用いる。英語の評価は,アメリカで開発された読みの検査を複数組み合わせて用いる。日本語と同様,聴覚的音韻分析と音韻入力レキシコンおよび視覚的文字分析と文字入力レキシコンの評価を行う。 以上の評価を,中学1年生の2事例に実施したところ,日本語の発達性dyslexiaのタイプが異なると,英語の評価結果もそのタイプを反映することが明らかになった(2013年発達性dyslexia研究会で報告)。その上で,当該の2事例に指導を行ったところ,音韻認識課題は苦手ながら聴覚的記憶が良好な事例は,2年後の再評価で英語の文字-音韻変換の流暢性・正確性に改善がみられた(2015年LD学会発表予定)。 このことから,発達性dyslexia児に対する英語指導は,以下の点が重要であることが明らかになった。①日本語における読みの評価を,認知神経心理学的モデルに基づいて的確に行うこと ②英語の評価も①と同様,聴覚的入力面と視覚的入力面をともに行うこと ③日本語の読み障害のタイプに基づきつつ,英語の読み障害のタイプを的確に把握すること ④③で明らかになったタイプに基づいて,個々の事例に合わせた英語指導プログラムを立案すること ⑤その間,学業の支援を適宜行って英語に対する自己効力感を高めること,などである。 今後は指導事例を蓄積しつつ,横断的データの収集にも努めたい。
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