平成26年度の「研究Ⅰ・Ⅱ」の調査研究では、研究成果の発表は学会での発表を中心として実施した。しかしながら、報告書に関しては、初年度の質問紙調査の遅れが影響したため執筆途中、「研究Ⅲ」のヒアリング調査の報告書も「研究Ⅰ・Ⅱ」の報告書作成の遅れが影響したため、執筆の途中である。 「研究Ⅳ」のモデル研究は、都内の小学校において実施した。その結果、養護教諭とそれ以外の教諭の連携においては、情報の共有化が非常に重要であった。モデル校では、①対象児の特別支援教育に関する情報をカルテ化し、②指導要録と同様に校長室の金庫に保管し、③情報は保護者の許可を得てすべてファイル化し、④担任以外も閲覧でき、⑤生活指導研修会等頻繁な情報交換を実施した。養護教諭が特別支援教育コーディネーターであっても、指導的な立場にない場合には担任への助言等がしにくいという実情が浮かび上がった。モデル校の養護教諭は生活指導主任でもあるため、支援対象児やそれ以外の児童に有効だといわれる学習指導方法の研修会を実施し、養護教諭以外の教員との共通理解を図った。 養護教諭とそれ以外の教員との阻害要因は、情報の共有化ができない場合、また、養護教諭が学習指導に参加できない場合である。情報の共有ができていればモデル研究や質問紙調査からは、養護教諭の特別支援教育の役割としては、サブ的な役割が求められること、メーンで実施する場合には、モデル研究で行ったような方法が必要であることが示唆された。 本研究を実施して新たに浮き彫りになったことは、被虐待児への支援がおきざりになっていることである。平成25年度には、児童相談所の被虐待児の対応件数が、厚生労働省が調査を始めてから初めて7万人を超えた。社会的養護が不足した状態が続いているため、児童相談所に保護された児童の8割は家庭に戻されている現状を踏まえ、早急な支援が必要である。
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