研究課題/領域番号 |
24531269
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
下野 正代 朝日大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80587147)
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研究分担者 |
籾山 錚吾 朝日大学, 法学部, 教授 (20110281)
杉島 正秋 朝日大学, 法学部, 教授 (90196725)
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キーワード | インクルーシブ教育 / 聴覚障害者 / 障害者権利条約 / 合理的配慮 / 情報保障 |
研究概要 |
・インクルーシブ教育システムの構築を目指す教育制度に関して、現状を把握するため、特別支援学校への訪問インタビュー、並びに通常の学校で教育を受けてきた当事者及びその保護者の体験をインタビューすることで実態を把握し、共生教育の必要性を認識した。 ・国際法「障害者権利条約」の意図するところを文献研究により理解するとともに、小・中学校、高等学校、特別支援学校での校内研修、並びに地域の教員を対象とした研修会で講演を行い、共生教育への理解と合理的配慮の必要性についての理解を求めた。 ・全国の手話通訳者の研究大会に参加し、聴覚障害者への合理的配慮の現状を把握するとともに、県内の要約筆記者の研修会に講師として参加し、障害者権利条約の主旨、共生教育に至るまでの歴史的経過や必要性、聴覚障害児者の心理への配慮の必要性に関して講演を行った。 ・聴覚障害児者への特別支援教育及び共生教育の現状を把握するため、バイリンガル教育を推進しているろう学校の実践研究発表会に参加し、聴覚障害児者の言語理解に関して理解を深めるとともに、インクルーシブ教育システムの構築を目指す教育制度に関する方策を考察した。 ・要約筆記に詳しく経験も豊富な研究協力者の杉島正秋教授と共に県内の通常の学校に在籍する児童生徒の把握をし、合理的配慮の可能性を探るため、モバイル型遠隔情報保障の効果を検証する準備に入った。通常の学校での共生教育を強く希望する人工内耳の児童生徒並びにその保護者にインタビューを行い、共生教育への思いと合理的配慮の必要性を認識し、当事者の希望に応えられるよう、平成26年度在籍予定の中学校、高等学校と連携し、合理的配慮としての情報保障が行えるよう方途を探った。また当事者に心理的負担とならないよう遠隔での情報保障が行えるよう最適で廉価なITシステムや機器を選択し、支援者側の理解と能力の向上に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・国際法「障害者権利条約」を日本が批准したことにより、国内におけるインクルーシブ教育制度の構築は、日本の喫緊の課題となった。今後、学校現場でのインクルーシブ教育制度への理解と必要性は急速に加速すると考えられる。通常の教育を受けてきた聴覚障害者の体験や思いをインタビュー調査をすることで、更に合理的配慮の必要性を把握することができた。 ・「障害者権利条約」の意味や当事者の体験や思いを研修会や講演会で伝えることで、インクルーシブ教育の必要性を浸透させることができた。 ・パソコンやインターネット、携帯電話の進歩により、当事者への心的負担を少なくすることができるモバイル型遠隔情報保障の実践に向けて、協力と連携を依頼できる学校と人的物的資源を確保することができた。 ・パソコンやインターネット、携帯電話を活用したモバイル型遠隔情報保障を支援チームと協力して試験的実践を行い可能であることが検証できた。 ・次年度以降、研究の対象となる当事者、通常の学校、支援チームの理解と協力のもと、モバイル型遠隔情報保障という合理的配慮の効果を検証する準備段階に入った。
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今後の研究の推進方策 |
・インクルーシブ教育システムの構築に向けて、聴覚障害児者への合理的配慮の方法について、更に研究を進め、その成果を公表する。 ①聴覚障害者の在籍する学校と要約筆記者のグループと協力して、モバイル型遠隔情報保障の実践を対象校で行い、その可能性や問題点を探る。 ②教科毎の合理的配慮の必要性や方法について実践を行うことで、教科毎の情報保障の可能性を検討する。 ③当事者のニーズが特に高い「外国語教育」に関しての情報保障について、効果的な方法を探る。 ④研究協力者であるアメリカの弁護士シーゲル氏を招聘し、日米の情報保障を比較検討するとともに、3年間の研究成果の発表会を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内での文献研究、視察、県内でのインタビュー調査、講師としての県内での啓発活動が中心であった。 次年度にモバイル型遠隔情報保障の可能性と効果について検証をおこなうため、機器や人件費の留保と、研究協力者をアメリカより招聘し、研究発表会を行うため、交通費並びに日当、通訳者・情報保障者の交通費及び報償費を留保した。 ・モバイル型遠隔情報のためのパソコン、モバイル、携帯電話等の物品購入と、情報保障者への謝金等 ・アメリカより研究協力者を招聘し、研究発表会を行うための旅費、通訳・要約筆記者の旅費及び謝金、会場費、印刷費
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