研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本手話と日本語によるバイリンガル・アプローチを用いた特別支援学校(聴覚障害)に在籍する小学部児童の言語発達と認知発達の実態を明らかにすることで、バイリンガル・アプローチの有効性と各教科における指導法を検討することにある。 研究最終年度である平成26年度は、過去2年間の研究に引き続き日本手話の言語発達の実態のために、Morgan(2006)を参考にし、絵本「Frog,where are you?」の手話語りデータの収集を行った。その結果、小学部児童26名の手話語りデータを収集することができた。 また、各教科における指導法を検討するために、手話、日本語、社会、算数、理科等の45分×12コマの授業を指導者側と児童側の2方向から撮影することができた。 3年間の研究をとおして、まず日本手話の言語発達については、絵本「Frog,where are you?」の23名の手話語りデータから、横断的に、平均発話長、TTR、エピソードスコア、結束性を分析することで、小学部高学年から、日本手話が「学習言語」と推測される一つレベルの高い段階へ発達していることが分かった。日本語の書き言葉の言語発達については、絵本「Frog,where are you?」の場面に基づいて日本語の絵本を作成するという課題で収集した14名の日本語作文データから、横断的に,文産出量、語産出量、文の長さ及び複文の割合で分析することで、小学部6年の段階になると複文を用いた複雑な文を産出することができるようになっていると分かった。 認知発達については、DN-CAS認知評価システムを小学部24名に対して実施した。その内、20名を対象として、3年前のDN-CAS13名のデータや公立特別支援学校(聴覚障害)で実施した27名の結果と比較分析を行い、学年相当の認知発達をしていること、3年前や公立の結果と有意差が認められないことが明らかになった。 以上より、聴覚障害教育におけるバイリンガル・アプローチは有効であると判断した。
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