研究課題/領域番号 |
24531276
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 |
研究代表者 |
大内 進 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 企画部, 客員研究員 (40321591)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 障害児教育用教材 / 空間理解 / 真空成型 / 立版古 / 触覚 |
研究概要 |
視覚活用が困難であっても2次元画像を理解することは可能である。これまでに絵画を半立体的なレリーフに翻案するとともにレリーフを原盤とした真空成型法教材作成法や立版古法による簡便な3次元提示教材などの活用の可能性を提案した。これにより3次元形状の表現に制限はあるが、低コストで立体教材を作成することが可能となる。 現在盲学校等で使用されている点字教科書の図は,2次元的な触図が中心で,その表現力は限定的であり、児童生徒がそれらの図から具体的なイメージを持つことは容易ではない。本研究では、より具体的なイメージを提供できる画像情報を提供するために、真空成型法及び立版古法を用いた小中学校の検定教科書に掲載されている図版の半立体グラフィック教材の作成と活用法について考究を進めている。 平成24年度においては、基礎的な資料収集を中心に取り組んだ。小・中学校段階の全盲児童生徒用の半立体教材作成という観点から、教科書に図版が多く掲載されている社会科、理科、算数における教材開発のために、以下の活動を行った。 半立体化翻案候補教材を選定するために、点字教科書の図版と原典教科書の図版を整理した。本年度における真空成型教材作成のためおの資料として活用する予定である。半立体化にあたっての空間の層化及び圧縮の原理、人物像の表現法等の原則や規格の策定のための作業に取り組むとともに、真空成型半立体母型作成の原則について検討した。半立体触覚教材の原型の造形とのカラー真空成型教材作製法の検討を行った。具体的には、先行研究の成果を基に、触覚活用を踏まえた真空成型用原型の作成法や配慮点を検討し、合わせて真空成型法によるカラー化及び3D化方法論について検討した。海外の教材開発状況調査については、イタリアのミラノ盲人施設の触覚教材開発部門等の取組状況を調査し、半立体教材に関する最新の情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1年次に実施を予定していた内容については、概ね計画にしたがって取り組むことができ、真空成型による触覚教材作成の基礎資料として整理することができた。 教科としては社会科、理科、算数を中心に教材作成に取り組むこととしたが、視覚障害教育を担っている視覚障害特別支援学校においては対象児童数の減少が著しく、教科学習が可能な児童に協力を得ることが大きな課題となっている。25年度においては、協力依頼先の拡大に努めていくこととしている。
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今後の研究の推進方策 |
真空成型教材用原盤について、当初の計画では切削法による造型を予定していたが、安価な積層用による造型装置が登場し、学校教育機関への導入も可能となってきたことから、平成25年度においては、画像処理用PC及びソフトウェアに替えて積層用造型装置を利用して原型の活用の可能性について検証するとともに、この方式で作成した原型に基づいて、社会科、理科、算数・数学科用の真空成型教材を試作し、触覚的な認知特性や色彩の再現度についてSD法を用いた官能評価により定量的化して検証する。なお、社会科、理科、算数・数学科用の教材は、前年度の調査結果に基づいて選定する。 また、立版古法による教材の試作と検証も行う。立版古翻案の原則に基づいて,前年度に作成した点字教科書の図版資料に基づいて社会科,理科教科書の立版古教材を試作する。試作教材について、視覚特別支援学校の協力を得て,その効果と課題について検証する。それらの結果を踏まえて、作成の基本原則を検討しガイドブックに反映する 海外での障害児用半立体教材に関する対応状況について、前年度の調査を踏まえて、本年度は特に指導法について最新の取組状況を把握することに努め,その成果を基に指導法の改善について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度購入を予定していた大型真空成型機(C.R.Clarke 社製 Vacuum Former 750FLB)が予定より高額であったため、本年度に納入して、大型真空成型教材の作製に活用する。また、実際的な活用という観点から、当初計画していた画像処理用PC及びソフトウェアに替えて、学校教育機関等でも納入可能な積層用造型装置を導入する。教員等による真空成型教材用原型作成のための具体的方策や課題点等について検証する。これらの検証作業や研究成果の発表に関連して、消耗品、研究補助、国内旅費等を支出する予定である。 外国旅費に関しては、海外での障害児用半立体教材に関する対応状況について、前年度の海外調査を踏まえて、本年度もイタリアでの教材開発と活用、特に指導法について最新の取組状況を調査する。
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