研究課題/領域番号 |
24540004
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
後藤 泰宏 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40312425)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | K3曲面 / ミラー対称 / デルサルト型曲面 / 形式的ブラウアー群 / 国際研究者交流(カナダ) / 国際研究者交流(台湾) |
研究概要 |
本研究の目的は、ミラー対称なK3曲面を有限体上や代数体上で考察し、数論的観点からミラー対称性の精密化を試みることである。考察するK3曲面は、重さ付き3次元射影空間内で、デルサルト型方程式(もしくは、その1次元変形)により定義される代数曲面で、反シンプレクティックな対合を持つものである。K3曲面のミラー対称性は、Nikulinの不変量の入れ替えによって定義する。ミラー対称性の精密化に用いる数論的性質は、K3曲面の形式的ブラウアー群、有限体上の曲面のゼータ関数とその特殊値、代数体上の曲面のL関数とそのモジュラリティである。 平成24年度は、研究対象の特定と形式的ブラウアー群の分析を行うことを目標とした。研究協力者(海外共同研究者)の由井典子氏(カナダ・クイーンズ大学教授)やJeng-Daw Yu氏(台湾・国立台湾大学助手)と適宜研究打合せを持つことにより、次の3つの成果を得ることができた。 (1) 重さ付き3次元射影空間内の曲面で、デルサルト型方程式とその1次元変形により定義されるものを決定し、その中で反シンプレクティックな対合を持つK3曲面を特定した。 (2) 上記(1)で求めたK3曲面の族に対してNikulin不変量を計算し、ミラー対称性を確認した。なお、Nikulin不変量は3種類の数値で構成されるが、現時点ではミラー対称性に関係のある2つの不変量の計算が完了した。一部のK3曲面に対しては、3つ全ての不変量が計算できている。この結果はe-print archiveで公表し、学術雑誌に投稿した。 (3) 上記(1)で特定したK3曲面を有限体上で考え、その形式的ブラウアー群の高さを具体的に計算し、形式的ブラウアー群のレベルでのミラー対称性の分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究目的は、研究対象の特定と形式的ブラウアー群の分析を行うことであった。具体的には、次の3点を目標に設定していた。 (1) 重さ付き3次元射影空間内のデルサルト型曲面とその1次元変形をすべて求め、反シンプレクティックな対合を持つK3曲面を特定する。計算機の援用により、条件をみたすK3曲面の族をすべて特定する。 (2) (1)で求めたK3曲面の族に対してNikulin不変量を計算し、ミラー対称性を確認する。一般的に、Nikulin不変量を構成する3種類の数値のうち2つは比較的容易に計算できるが、3つすべてを求めることは難しい。もし、すべての不変量の決定が困難であれば、ミラー対称性に関係のある不変量のみ計算する。 (3) 研究対象を特定した後は、得られたK3曲面を有限体上で考え、形式的ブラウアー群の計算を通して新たな対称性の検出を試みる。 これら3つの目標に対して、(3)の形式的ブラウアー群における対称性の検出以外は、当初の目的を達成した。そのことから、現在までの研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降も、当初の予定通り研究を進めていく。特に、平成25年度は、ミラー対称なK3曲面を有限体上で考察し、ゼータ関数とその特殊値における対称性の検出を試みる。ここではデルサルト型のK3曲面に集中し、1次元変形は扱わない。また、24年度に完了できなかったK3曲面の形式的ブラウアー群における対称性の検出について考察を続ける。 25年度に研究を予定しているデルサルト型曲面のゼータ関数の主要部は、ヤコビ和を用いて記述できる。そのヤコビ和の性質を用いて、K3曲面のコホモロジー群やゼータ関数の分解を調べる。また、計算機を用いた数値計算も行う予定である。計算ソフトMagmaを用いて、ゼータ関数とその特殊値を数値的にも計算する。 24年度と同様、25年度もメール等によって研究協力者の由井典子氏やJeng-Daw Yu氏と頻繁に連絡を取り合い、ゼータ関数の対称性を探る際に研究協力を求めたい。由井氏との集中的な研究打合わせは、東京とカナダでの2回を予定している。成果発表は、国内で2度、国外で1度を計画している。特に、25年度はカナダのフィールズ研究所でカラビ・ヤウ多様体の数論に関する半年間の研究プログラムが開催される。その中の研究集会に参加して本研究の大幅な進展を図りたい。また、北海道大学の数論幾何学セミナー等に定期的に出席して、研究者らと情報交換を行い国内外の研究動向を調査する。関東や関西で開かれる研究集会へも積極的に参加し 研究連絡や情報収集を行う予定である。 なお、本研究費の申請時に記載したように、25年度に新規のデスクトップパソコン1台を購入し、今後も数値計算が滞りなく行えるように備える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度には98329円が繰り越されることになった。その主な要因は、図書の購入が予定よりも少なくて済んだことと、謝金を伴う研究依頼が必要なかったことによる。この繰越金については、25年度の研究に必要な図書の購入費、もしくは謝金を伴う計算プログラミングの補助に充てたい。すでに配分予定の次年度(25年度)の研究費については、当初の予定通り使用する計画である。
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