研究課題/領域番号 |
24540004
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
後藤 泰宏 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40312425)
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キーワード | K3曲面 / ミラー対称性 / デルサルト型曲面 / ゼータ関数 / 国際研究者交流(カナダ) / 国際研究者交流(台湾) |
研究概要 |
1.本研究の目的は、ミラー対称なK3曲面を有限体上や代数体上で考察し、数論的観点からミラー対称性の精密化を試みることである。考察するK3曲面は、重さ付き3次元射影空間内において、デルサルト型方程式(もしくは、その1次元変形)により定義される代数曲面で、反シンプレクティックな対合を持つものである。K3曲面のミラー対称性は、Nikulinの不変量の入れ替えによって定義する。ミラー対称性の精密化に用いる数論的性質は、K3曲面の形式的ブラウアー群、有限体上の曲面のゼータ関数とその特殊値、代数体上の曲面のL関数とそのモジュラリティである。 2.平成25年度は、デルサルト型のK3曲面を有限体上で考察し、ゼータ関数とその特殊値における対称性の検出を目標とした。また、24年度に完了できなかったK3曲面の形式的ブラウアー群における対称性の検出も目標の1つとした。研究協力者(海外共同研究者)の由井典子氏(カナダ・クイーンズ大学教授)やJeng-Daw Yu氏(台湾・国立台湾大学助手)と適宜研究連絡を行うことにより次の4つの成果を得ることができた。 (1) 形式的ブラウアー群の高さに関して対称性を有するK3曲面の例を検出した。 (2) 重さ付きデルサルト型K3曲面のゼータ関数について、そのモジュラリティに係るゼータ関数の重要な因子をヤコビ和等を用いて記述した。 (3) 上記(2)で求めたK3曲面のゼータ関数の特殊値をヤコビ和等を用いて記述するとともに、ミラー対称性の検出を試みた。 (4) 上記(2)で求めたK3曲面について、モジュラリティのレベルでミラー対称性を考察した。そして、昨年度学術雑誌に投稿した論文について、査読者からのコメントをもとにその内容を大幅に改訂して再投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.平成25年度の研究目的は、ミラー対称なK3曲面を有限体上で考え、ゼータ関数とその特殊値においてミラー対称性を検出することであった。具体的には、次の3点を目標に設定していた。(1)重さ付きデルサルト型K3曲面のゼータ関数を計算すること、(2)K3曲面のゼータ関数の特殊値をヤコビ和等を用いて記述し、特殊値のレベルでミラー対称性を検出すること、(3)計算機によって、ゼータ関数の特殊値等を数値的に計算して対称性を確認することである。また、24年度に完了できなかったK3曲面の形式的ブラウアー群における対称性の検出も目標としていた。 2.これらの目標に対して、(3)の計算機を用いた数値計算以外は、当初の目的を概ね達成した。(3)の数値計算については、研究上の都合で、次年度の課題としていたL関数のモジュラリティに係わる考察の一部と入れ替えることにした。その部分については、予定どおりミラー対称性に関する成果を得た。一方、研究連絡や情報収集の面では、当初予定していたカナダのフィールズ研究所での研究集会や国内の研究会等へ順調に参加することができ、研究連絡等を滞りなく行った。研究連絡の相手には、研究協力者(海外共同研究者)の由井典子氏とJeng-Daw Yu氏が含まれる。以上のことから、現在までの研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の予定通り研究を進めていく。研究計画の最終年度である平成26年度は、ミラー対称なK3曲面を代数体上で考察し、L関数とその特殊値における対称性の検出を試みる。25年度に前倒しで着手したL関数のモジュラリティに関する対称性についても引き続き考察する。なお、26年度もデルサルト型のK3曲面に集中し1次元変形は扱わない。25年度に十分行えなかった計算機を用いた数値計算については、その必要性を再吟味し、数値計算の必要な部分については速やかに計算を実行したい。これまでと同様、26年度もメール等によって研究協力者の由井典子氏と頻繁に連絡を取り合い、L関数の対称性を探る際に研究協力を求める。由井氏との集中的な研究打合わせは、東京とカナダでの2回を予定している。成果発表は、国内で2度、国外で1度を計画している。また、北海道函館市で数論幾何に関する研究集会を開催し、専門家らと集中的に研究連絡を取る予定である。その他、北海道大学や関東圏、関西圏で開かれる研究会等に定期的に出席して、研究連絡や情報収集に努めたい。なお、25年度に予定していた新規デスクトップパソコンの購入は研究計画の部分変更のために保留しているが、数値計算の必要性に応じて26年度の早い時期に購入し、研究計画を滞りなく遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度には86,403円円が繰り越されることになった。その主な要因は、デスクトップパソコンの購入を保留したことと、謝金を伴う研究依頼の必要がなかったことによる。 上記繰越金については、保留したデスクトップパソコンの購入か、謝金を伴う計算プログラミングの補助に充てたい。すでに配分予定の次年度の研究費については、当初の予定通り使用する計画である。
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