研究課題/領域番号 |
24540007
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
飛田 明彦 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (50272274)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有限群 / 表現論 / コホモロジー / Burnside 環 / 分類空間 |
研究概要 |
本研究の主目的は、有限群の内部構造(特に素数 p に関する局所構造)、有限群のモデュラー表現論、有限群の分類空間のホモトピー論的な性質、の3者について、コホモロジーを通して考察することである。ここでは多元環、コホモロジーはすべて標数 p の体を係数体とするものとしている。 平成24年度の研究は、有限 p-群 P の両側 Burnside 環を考え、そのコホモロジー環への作用に焦点をあてて行われた。有限群の両側 Burnside 環は、有限群が左右から作用する有限集合の同型類によって生成されるある種の多元環である。Pを Sylow p-部分群として持つ有限群の p-局所構造を抽象化した対象である P上のフュージョンシステムは、 Burnside 環の特別な冪等元と対応することが知られており、Burnside 環の表現の研究はフュージョンシステムと大きく関わっている。また、両側 Burnside 環は P の外部自己同型群の群環を含んでおり、その表現論は外部自己同型群の表現論を含んでいる。一方、両側 Burnside 環は分類空間の安定ホモトピー圏での射を記述しており、自然にコホモロジーに作用している。これらのことより両側 Burnside 環のコホモロジーへの作用は、本研究の主目的に対して欠くことのできない対象であることがわかる。 本年度は、可換群に関する先行研究を考慮して、位数が p の3乗である非可換extraspecial p-群 P のコホモロジー環を Burnside 環上の加群として研究した。冪零元イデアルによる剰余環について、 Burnside 環上の加群としての既約組成因子とその重複度を完全に決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な研究目標は、位数が p の3乗で exponent が p である extraspecial p-群 P のコホモロジー環への、両側 Burnside 環の作用を解析することであった。ただし pは奇素数である。これはホモトピー論的な立場からみると、分類空間 BP の安定ホモトピー圏での分解に関する直和因子のコホモロジーを解析する、という意味を持っている。なお、多元環およびにコホモロジーは全て標数 p の体を係数体とする。 有限群 P の両側 Burnside 環は有限次元の多元環であり、P のコホモロジー環の各斉次数部分は Burnside 環上の有限次元加群である。その加群構造を決定することが目標である。 本年度の研究では、主に代数的な手法、表現論と関手的な方法により解析を行った。すなわち、P の外部自己同型群である2次の一般線型群の表現論と、群の両側集合関手の方法を利用することにより、コホモロジー環の Burnside 環上の加群としての既約組成因子とその重複度を調べた。既約加群に対応する冪等元を作用させた次数付ベクトル空間を調べることにより、次数ごとの議論ではなく、コホモロジー環全体の状況を把握することができることがわかった。P のコホモロジー環は非常に複雑な環構造を持っているため、第一近似として冪零元イデアルによる剰余環について考察し、完全な結果を得ることができた。また、残された冪零部分についても、本年度の結果を利用できる可能性があることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に引き続き、有限群のコホモロジーへの両側 Burnside 環の作用の解析を行う。平成24年度研究の主な手法は、表現論を中心とした代数的なものであったが、対象となる作用は分類空間の安定圏における射により引き起こされるものであり、ホモトピー論からの手法も合わせて考察していく必要がある。次年度以降は代数的手法のみならず代数的位相幾何学からの手法も視野に入れていく予定である。具体的には、コホモロジーに対するSteenrod 作用素や Milnor 作用素、特に、コホモロジー環を Stennrod 代数およびに Burnside 環上の両側加群とみての構造についての考察を取り入れたい。 研究対象としては平成24年度同様、奇素数 p について、位数が p の3乗でexponent が p である extraspecial p-群 P を取り上げる。P のコホモロジー環の両側 Burnside 環上の加群としての構造の解析について、平成24年度は冪零元イデアルによる剰余環の既約組成因子と重複度を決定したが、次年度は、残された部分である冪零部分の既約組成因子と重複度の決定を行うこと、次に、組成因子だけではなく直既約因子への分解の決定を行うことを目標とする。その後、位数がより大きい extraspecial p-群のコホモロジーの解析へと進める予定である。 さらに、これらの解析を通じて、一般の p-群、あるいはその p-群を Sylow p-部分群として持つ有限群に関する定性的な性質を考察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
情報収集と成果報告のため、日本数学会、環論および表現論シンポジウム、代数的組み合わせ論研究集会、代数学シンポジウム等の学会や研究集会に参加する。また、代数的位相幾何学関係の資料が不足しているが、平成24年度には十分な整備を行うことができなかった。そのため関係図書、報告集等の資料の収集、購入を行う予定である。
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