研究課題/領域番号 |
24540007
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
飛田 明彦 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50272274)
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キーワード | 有限群 / 表現論 / コホモロジー / Burnside 環 |
研究概要 |
有限群 P の両側 Burnside 環は、両側から P の作用する有限集合の同型類に対応する基底を持つ体上の有限次元多元環である。多元環やコホモロジーは正標数 p の体を係数とするものとする。両側 P 集合は、部分群と準同型写像によって記述され、準同型写像と transfer 写像を通して群のコホモロジーに作用し、コホモロジー環は両側 Burnside 環上の加群となる。 両側 Burnside 環は、ホモトピー論の観点からは、群の分類空間の安定圏での射と関係し、また、P の外部自己同型群とも関連し、その表現は自己同型群の表現を含んでいる。さらに P を Sylow p-部分群に持つ有限群も両側 Burnside 環の元として捉えられる。このような観点から両側 Burnside 環とその表現は本研究の対象として重要なものとなる。 本年度の研究では、位数が奇素数 p の3乗である非可換群 P について、この両側 Burnside 環のコホモロジー環への作用を考察した。 P のコホモロジー環は非常に複雑である一方、冪零元全体からなるイデアルによる剰余環はある程度簡明な構造をしている。昨年度の研究においては、この剰余環について、Burnside環上の加群としての既約組成因子とその重複度を決定することができた。本年度の研究の目的は、剰余環だけではなくコホモロジー環全体について Burnside 環上の加群としての既約組成因子と重複度を解析することである。整係数コホモロジーを経由することにより、剰余環と冪零イデアルの部分を関連付けることができ、昨年度の結果を用いることによりコホモロジー環全体を解析することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な研究目標は、奇素数 p に対して、位数が p の3乗で exponent が p である extraspecial p-群 P の mod p コホモロジー環への、両側 Burnside環の作用を解析することである。これはホモトピー論的な立場からみると、分類空間 BP の安定ホモトピー圏での分解に関する直和因子のコホモロジーを解析する、という意味を持っている。なお、多元環およびにコホモロジーは全て標数 p の体を係数体としている。 昨年度までの研究により、冪零元からなるイデアルによる剰余環への作用については、概ね結果が得られており、この結果を利用してコホモロジー環全体を調べることが本年度の課題である。 有限群 P の両側 Burnside 環は有限次元の多元環であり、P のコホモロジー環の各斉次数部分は Burnside 環上の有限次元加群である。両側 Burnside 環の表現論を利用して、その既約組成因子と重複度を決定することが目標である。既約加群に対応する冪等元をコホモロジー環に作用させて得られる次数付ベクトル空間を調べることにより、次数ごとの議論ではなく、コホモロジー環全体の状況を把握することができる。 本年度の研究では、整係数コホモロジーの考察や、 Milnor 作用素を用いることによって、冪零イデアルによる剰余と冪零イデアルとを関連付けることができた。その方法により、冪零イデアルの部分について結果が得られ、目標であったコホモロジー環全体について既約組成因子とその重複度を決定することができた。また、素数 p が 3 である場合についての、例外的な現象についても一部解析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、平成25年度に引き続き、有限群のコホモロジー環への両側 Burnside 環への作用について、解析を行う。主に次の3点について研究を行う。 1.Extraspecial p-群のコホモロジー環の直既約因子の考察。本年度の研究により組成既約因子の重複度が決定されたが、さらに詳しく、コホモロジー環の Burnside 環上の加群として現れる直既約因子について解析を行う。またその直既約分解のホモトピー論的な意義についても考察を行う。 2.Steenrod 作用素の作用との関連。本年度までの研究の主な手法は、表現論を中心とした代数的なものであったが、対象となる作用は分類空間の安定圏における射と関係のあるものであり、次年度以降は代数的位相幾何学からの手法も必要となる予定である。特に、Steenrod 作用素の作用を計算し、コホモロジー環を Steenrod 代数およびにBurnside 環上の両側加群とみたときの構造についての考察を取り入れたい。 3.位数の大きい extraspecial 群並びに一般の群への拡張。本年度までに得られた結果を、位数が p の 3 乗よりも大きい extraspecial p-群に拡張することを試みる。特に、外部自己同型群の既約表現に対応する Burnside 環の既約加群について、コホモロジー環の既約組成因子としての重複度について研究を行う。その中でも第一に、自明な表現の場合の考察が重要となる。これは、主支配的因子と呼ばれるもののコホモロジーを求めることに対応している。さらに、これらの解析を通じて、一般の p-群、あるいはその p-群を Sylow p-部分群として持つ有限群に関する性質を考察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
参加予定であった学会(「有限群とその表現、頂点作用素代数、代数的組合せ論の研究」京都大学数理解析研究所、2014年3月)に参加することができなかった。また、代数的位相幾何学分野を中心に文献や論文集、国際会議報告集、等の資料の購入・整備を予定していたが、情報不足のために十分な整備を行うことができなかった。 情報収集と成果報告のため、日本数学会、代数的組み合わせ論研究集会、代数学シンポジウム等の学会や研究集会、「環論および表現論シンポジウム」(2014年9月、大阪市立大学)、研究集会「有限群のコホモロジー論とその周辺」(2015年2月、数理解析研究所)に参加する。 また、平成25年度までに整備が不足していた関係図書、報告集等の資料の収集、購入を行う予定である。
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