研究課題/領域番号 |
24540013
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山田 美枝子 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70130226)
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研究分担者 |
籾原 幸二 熊本大学, 教育学部, 講師 (70613305)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ガロア環 / 差集合 / 符号理論 / ガウス和 |
研究概要 |
本研究は標数と拡大次数を動かしてガロア環(あるいはガロア環の直積)上に、その性質を保持し相互に構造上関連性のある差集合、符号, difference family, Hadamard行列などの系列を構成することを目的する.科学研究費基盤研究(C)「ガロア環上の組合せ数学の研究」(課題番号20540014)を引き継ぎ、統計学、工学への応用の視点を持った研究へと発展させる.具体的には、標数と拡大次数を動かしてガロア環(あるいはガロア環の直積)上に、その性質を保持し相互に構造上関連性のある差集合、符号, difference family, Hadamard行列などの系列を構成する. 平成24年度には、標数を2べきから奇素数べきのガロア環に拡張して考察を行う、Cayley graph、association schemeの構成、組合せ数学の研究対象の相互の関連性、ガウス和など指標和との関連性を探る研究、以上を課題として挙げた. 標数が奇素数べきのガロア環上のPreparata code の復号アルゴリズムの考察や、標数4のガロア環のKerdock codeから得られるassociation schemeの構成について成果が得られた.これらの結果は応用数学合同研究集会(日本数学会応用数学分科会主催、平成24年12月龍谷大学で開催)で発表した.分担者により、相対ガウス和を用いたCayley graph, skew Hadamard行列の構成、cyclotomyを用いた3 class association schemeの構成などの成果が得られた(2012年に学術雑誌出版、研究集会で発表).さらに、代表者と分担者により、標数4のガロア環からdivisible difference family, Hadamard 行列が構成できることを示すことができた(論文掲載決定).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実施計画の課題として、標数を2べきから奇素数べきのガロア環に拡張して考察を行う、Cayley graph、association schemeなどの構成、組合せ数学の研究対象の相互の関連性、ガウス和など指標和との関連性を探る研究を挙げた. 研究代表者の思いがけない半年間にわたる病気休職により、研究の進捗が遅れたが、標数が奇素数べきのガロア環上のPreparata code の復号アルゴリズムの考察や、標数4のガロア環のKerdock codeから得られるassociation schemeの構成について成果が得られた. 分担者により、相対ガウス和を用いたCayley graph, skew Hadamard行列の構成、cyclotomyを用いた3 class association schemeの構成などの成果が得られた. また、ガロア環上の差集合の構成の研究から、計画にはなかった標数4のガロア環からdivisible difference family, Hadamard 行列が構成できることを示すことができ(論文掲載決定)、研究の幅が広がりつつある. 以上により、平成24年度の実施計画をほぼ達成し、研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでのガロア環上の研究成果を基に、交付申請時にたてられた研究実施計画にそって、研究を進める.すなわち、異なる標数のガロア環の直積上の差集合、符号、difference family, association schemeなどの系列の構成の研究に着手する. difference familyからデザイン、association schemeを構成する、あるいは、デザイン、association schemeから符号、difference familyを構成する原理を見出すことも重要な課題である.差集合、符号、difference family, association schemeの構成とガロア環、有限体の指標和、特にガウス和、相対ガウス和との関連性を明らかにしたい.また、この他の組合せ数学の様々な分野への応用も考えられ、今後は組合せ数学の他の分野へ研究を広げて、帰納的、統一的構成原理の構築を目指したい.本研究の対象が広がり、構造、性質の乗法が多くなればなるほど、最終目的であるp進体の組合せ理論の構築への大きな手がかりを得ることになる.実験計画、暗号、符号アルゴリズムなど統計学、工学の視点を持って組合せ数学の様々な研究対象のガロア環上の構成へ研究を広げることも引き続き重要である. 本研究の成果発表と同時に、数論、組合せ数学の研究者との情報交換が不可欠であるので関連する国内外の研究集会に出席する.
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次年度の研究費の使用計画 |
まず、これまで得られた結果を分析し、これを踏まえて、異なる標数のガロア環の直積上の差集合、符号などの構成、difference familyとデザイン、association scheme相互の関連性、ガロア環、有限体の指標和、特にガウス和、相対ガウス和との関連性を明らかにすることを目指したい. いずれの問題でも理論構築のためには計算機実験によって多くの実例を見つけることが重要である.院生にプログラムを作成、出力した結果の整理を依頼する.今年度と同様に組合せ数学、数論の研究者との情報交換のための旅費、国内外の研究集会での成果発表のための旅費にも使用する. 巡回符号については、原田昌晃氏(山形大)、strongly reular graphsについては、神保雅一氏(名大)、藤原良叔氏(筑波大)の知見が大きな助けになると思われる.有限体のガウス和、ヤコビ和を用いた組合せ数学の研究の第1人者であるXiang氏、(デラウェア大USA)Feng氏(浙江大) や、デザイン論の専門家であるKharaghani氏(レスブリッジ大、カナダ), Craigen氏(マニトバ大、カナダ)と情報交換を密接に行いたいと思っている. 組合せ数学および代数学や組合せ数学など関連分野の学術図書も引き続き購入する.
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