研究課題/領域番号 |
24540013
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山田 美枝子 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70130226)
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研究分担者 |
籾原 幸二 熊本大学, 教育学部, 講師 (70613305)
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キーワード | ガロア環 / 差集合 / 符号理論 / ガウス和 |
研究概要 |
本研究は基礎の代数構造を有限体からガロア環へ拡張し、そこでの組合せ数学、特に差集合、符号、デザインの新しい構成原理を得ることを目的とする.具体的には、標数と拡大次数を動かしてガロア環(あるいはガロア環の直積)上に、その性質を保持し相互に構造上関連性のある差集合、符号、difference family, Hadamard行列などの系列を構成することを目的とする.科学研究費基盤研究(C)「ガロア環上の組合せ数学の研究」(課題番号20540014)を引き継ぎ、統計学、工学への応用の視点を持った研究へと発展させる.最終目的は、p進体上の組合せ理論の構築であり、そのための手がかりを得ることである. 平成25年度には、異なる標数のガロア環の直積上の差集合、符号、difference family, association schemeなどの構成の研究に着手する.difference familyからデザイン、 association schemeから符号、difference familyを構成する原理を見出す、差集合、符号、difference familyなどの構成に関わる、ガロア環、有限体の指標和、特にガウス和、相対ガウス和との関連性を明らかにする、以上を課題として挙げた. 標数が奇素数べきのガロア環上のBCH code の2エラーまで復号できるアルゴリズムが構築できた.また、最終目的のおおきな手がかりとなると思われる、2進体の整数環の部分集合の射影からガロア環の差集合の系列が構成できた. 分担者により、skew Hadamard行列の非同値性に関する新しい知見や、有限体上のstrongly regular Cayley graph、そのliftingの研究、cycylotomyからの3-class association schemeの構成に関する研究などの成果がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の実施計画の課題として、異なる標数のガロア環の直積上の差集合、符号、difference family, association schemeなどの構成に着手し、difference familyからデザイン、 association schemeから符号、difference familyを構成する(あるいはその逆)原理を見出すことを挙げた.差集合、符号、difference family, association schemeの構成に関わる、ガロア環、有限体の指標和、特にガウス和、相対ガウス和との関連性を明らかにすることも課題のひとつである. 最終目的は、これらの成果を踏まえて、p進体上の組合せ理論を構築することである.これに対して、標数が2べきのガロア環上の差集合の系列の構成の研究から、その手がかりの一つを得た。すなわち、局所体である2進体の整数環の部分集合の射影からガロア環の差集合の系列が構成でき、この系列は差集合が差集合に埋め込まれているという構造を持っている(論文準備中).これは本来計画になかった成果である.ガロア環上のBCH codeの2エラー復号アルゴリズムが構築できた。しかし計画の一つであった異なる標数のガロア環の直積上の差集合他の研究には着手できなかった。 以上から、研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでのガロア環上の研究成果を基に、交付申請時にたてられた研究実施計画にそって、研究を進める.さらに、平成25年度に得られた、2進体の整数環の部分集合の射影から得られるガロア環の差集合の構成の研究を、一般のp進体の部分集合からの差集合や、符号、デザインの構成に発展させたい.一方、有限環であるガロア環上の組合せ数学の研究も平行して行う。差集合、符号、difference family, association schemeの構成とガロア環、有限体の指標和、特にガウス和、相対ガウス和との関連性を明らかにしたい.実験計画、暗号、符号アルゴリズムなど統計学、工学の視点を持って組合せ数学の様々な研究対象のガロア環上の構成へ研究を広げることも引き続き重要である. これまでの成果を、6月に開催される代数的組合せ論研究集会、および7月に開催されるWorkshop on Algebraic Design Theory and Hadamard Matrices (ADTHM) 2014で講演する(招待講演).巡回符号については、原田昌晃氏(東北大)、strongly reular graphsについては、神保雅一氏(名大)、藤原良叔氏(筑波大)、宗政昭弘氏(東北大)の知見が大きな助けになると思われる.有限体のガウス和、ヤコビ和を用いた組合せ数学の研究の第1人者であるXiang氏、(デラウェア大、USA)Feng氏(浙江大、中国)や、デザイン論の専門家であるKharaghani氏(レスブリッジ大、カナダ), Seberry氏(ウーロンゴン大、オーストラリア)、Craigen氏(マニトバ大、カナダ)と情報交換を密接に行いたいと思っている.代数学や組合せ数学など関連分野の学術図書も引き続き購入する.
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年11月に、Workshop on Algebraic Design Theory and Hadamard Matrices (ADTHM) 2014研究集会(2014年7月8日-11日、カナダ、Lethbridgeで開催)の組織委員会より、講演の招待があった。この研究集会に引き続いて、カナダ、Banff International Research Centerで開催される研究集会 Algebraic design theory with Hadamard matrices: applications, current trends and future directions(2014年7月11-13日)にも出席する予定である。 その旅費分を次年度に繰り越した。 カナダで開催されるWorkshop on Algebraic Design Theory and Hadamard Matrices (ADTHM) 2014研究集会とAlgebraic design theory with Hadamard matrices: applications, current trends and future directions研究集会に出席する往復旅費に使用する.
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