研究実績の概要 |
リーマンゼータ関数のk階微分に対する数論的誤差項の研究は連携研究者である南出真氏の研究に端を発するが,今年度は南出氏と連携研究者の古屋淳氏とともに,その円問題への拡張を考察した.名古屋大学と山口大学で6回程度のセミナーを行い,現在 Voronoi公式と Chowla-Walum の公式から2つのアプローチを試みている. 前年度に古屋氏との共同研究で, 円問題の場合に, その誤差項のシフトした離散和をそれより低次の連続和のベルヌーイ多項式を係数とする一次結合で表した.ディリクレ約数問題の場合にも部分的な結果は得ていたが,円問題の場合と同等の公式を得るべくいろいろ計算を試みたが,まだ完全解決には至っていない. 前年度までに私は,Cao氏, Zhai氏との共同研究として, 拡張されたセルバーグクラスに属するディリクレ級数に対する数論的誤差項の Tong-type truncated formula を導き,その応用として,非対称多次元約数問題の誤差項の2乗平均を研究した.今年度は我々の公式の更なる応用として,数論的誤差項の Jutila タイプの短区間平均値定理を彼等と共同で研究した. その結果2種類の定理を得たが,それぞれ長所短所があり問題に応じて使い分けることが必要となる.特に第2の定理は Tong タイプの公式が本質的に使われており応用も広いと思われる.たとえば Piltz の約数問題, 特に $d_3(n)$ に関して Baire 達の Averages of shifted convolutions への応用, その数論的誤差項のサインチェンジなどでいくつかの結果を得た.現在さらにそれらの改良を試みている.
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