研究課題/領域番号 |
24540016
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
星 裕一郎 京都大学, 数理解析研究所, 講師 (50456761)
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キーワード | 遠アーベル幾何学 / 組み合わせ論的遠アーベル幾何学 / 組み合わせ論的セクション予想 / サイクルの標準持ち上げ / 双曲的代数曲線 / 穏やかな点 / 写像類群 / 合同部分群問題 |
研究概要 |
1、研究実施計画で述べた「組み合わせ論的遠アーベル幾何学の基礎理論の整備」として、望月新一氏と共同で、組み合わせ論的遠アーベル幾何学に関する以下の研究を行った。「離散性とセクション」をキーワードとして、組み合わせ論的セクション予想の研究、これまで得られた組み合わせ論的遠アーベル幾何学における結果の離散版、双曲的代数的リーマン面のサイクルの標準持ち上げの理論の研究。 2、研究実施計画で述べた「数体上の代数曲線に対する双有理セクション予想の研究」それ自体の進展ではないが、それに関する考察に着想を得て、加法構造をその乗法的な情報によって記述・復元する、関数体に対する古典的な「内田の補題」という数学的命題の、数体に対する類似を証明した。この結果によって、これまであまり研究がなされていなかった数体に対する単遠アーベル幾何学へのアプローチの可能性が示唆される。 3、研究の目的に記載した「双曲的代数曲線に付随する外ガロア表現から定まる拡大体とその曲線の数論幾何学の関連」という枠組みの研究として、以下のような非自明な事実を証明することができた。松本眞氏が研究を始めた「穏やかな点」という概念が、アーベル多様体の捻れ点という概念の双曲的代数曲線に対する類似であるという観察から、数体上のアーベル多様体の捻れ有理点の集合のよく知られた有限性の類似として、数体上の双曲的代数曲線の穏やかな有理点の集合は有限かという問題が考えられる。この有限性を、与えられた代数曲線が一点抜き楕円曲線の場合に証明した。また、飯島優氏との共同研究として、写像類群に対する合同部分群問題の副p版を、種数が1の場合に、pが3、5、7以外の場合に完全に解決した。この証明において、その「双曲的代数曲線に付随する外ガロア表現から定まる拡大体」の研究が中心的な役割を果たしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組み合わせ論的遠アーベル幾何学の基礎理論の整備では、当初から目標としてきたトピック「組み合わせ論的セクション予想の研究」、「これまで得られた組み合わせ論的遠アーベル幾何学における結果の離散版」、「双曲的代数的リーマン面のサイクルの標準持ち上げの理論の研究」に関して、充分に満足のいく結果が得られている。また、研究の目的に記載した「双曲的代数曲線に付随する外ガロア表現から定まる拡大体とその曲線の数論幾何学の関連」の研究に関しては、当初想定していなかった、数体上のアーベル多様体の捻れ有理点の集合の有限性という非常に古典的かつ基本的な事実の双曲的代数曲線類似が得られたことは興味深いことである。また、この「双曲的代数曲線に付随する外ガロア表現から定まる拡大体」の考察から、純粋にトポロジー的な問題として定式化可能な「写像類群に対する合同部分群問題の副p版」にアプローチできたことも、非常に興味深い展開であったと評価できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に記載した「モノドロミー充満な双曲的代数曲線の基礎理論の整備」に、この度得られた穏やかな点に対する知見を用いてアプローチしていくつもりである。また、研究実績の概要に記載したとおり、関数体に対する古典的な「内田の補題」の数体に対する類似が得られたため、これまであまり研究がなされていなかった数体に対する単遠アーベル幾何学の研究を行うことに意味があると考える。この方向の研究において、数体の絶対ガロア群やその適切な商に対して、それらと密接に関わるような古典的な代数的数論を用いる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行の際の物品費が当初計画よりも小さくなったため、次年度使用額が生じた。 この次年度使用額は来年度の人件費の一部に充当される予定である。
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