研究課題/領域番号 |
24540018
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安田 正大 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90346065)
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研究分担者 |
近藤 智 東京大学, 学内共同利用施設等, 助教 (30372577)
平之内 俊郎 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30532551)
田口 雄一郎 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (90231399)
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キーワード | p進 Hodge 理論 / コホモロジー / 多重ゼータ値 / 保型表現の圏 / トポス |
研究概要 |
研究代表者は山下剛氏と共同で、p進体上の開多様体のコホモロジーの比較定理の詳細を検討した。証明の詳細を書きあげるためには、対数的スキーム上の相対正規交叉因子や、フロベニウス持ち上げと因子のデータが付随した埋め込み系になどについて、いくつか道具立てを用意する必要があることがわかり、それらの整備を行った。 研究代表者はp進多重ゼータ値を計算するアルゴリズムを考案し、そのアルゴリズムに基づいてコンピュータを用いた数値実験を行った。その結果、p進多重ゼータ値と有限多重ゼータ値の間を結びつける予想に到達した。この予想は有限多重ゼータ値のなす環の構造についての金子・Zagier による予想の部分的解決を導くものであり、整係数p進コホモロジーの理論を用いた現実的なアプローチがしやすい形となっている。 研究代表者と研究分担者の近藤は、保型表現の圏の構造を調べるために、保型表現の圏をトポスとして与えるサイトの構築について共同研究を行い、ある種のガロア理論の大筋を完成させた。これは Grothendieck のガロア圏および保型表現からくるトポスを含むトポスに対して適用可能であり、また Joyal・Tierney の理論ほどの一般性はないが具体的な計算に適している。 研究分担者の田口はガロア表現の合同について小関祥康氏と共同研究を行った。代数体の2つの幾何的なl進ガロア表現が法lで合同なとき、それらは局所的には元々同型か、という問題を研究し、適当な条件の下この種の命題を証明した。研究分担者の平之内は、主に局所体上の楕円曲線の積に対する Galois 記号写像やサイクル写像の単射性について研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
p進体上の開多様体のコホモロジーの比較定理の詳細を詰める際の困難が予想以上に多く、道具立ての整備にかなり時間が掛かった。また、保型表現からくるトポスを応用する際に必要となると思われた2圏に値を持つ層の理論の整備にも時間が掛かった。
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今後の研究の推進方策 |
上記のような困難があったため、研究の進捗状況は遅れているが、その代わりに本研究を通じてもともと期待していなかった方向の結果が得られた。そのような意味では豊かな研究成果が得られたともいえる。今後はそれらの新たな方向性も視野に入れた、より幅広い内容の研究を行ってゆきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者は年度末近くに京都大学と北海道大学に出張して助成金を使い切る予定であったが、一部の出張について旅費の支給は他から受けることになったことに加え、予想よりも旅費が安く済むことになったため、わずかではあるが残額が発生した。また分担者の平之内は分担金の残額を学会出張に使用する予定であったが、行けなくなった。 大半を分担者の平之内が今年度の「代数的整数論とその周辺」または「仙台広島整数論集会」への出張に使い, 残額を研究代表者が京都大学への研究打ち合わせのための出張に使う予定である。
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