研究概要 |
位数uの群Uと整数k,λ>0に対してUの元を成分にもつk行uλ(=n)列の行列A=(aij)が群U上の(u,k,λ) - difference matrixであるとは任意の異なるh行とi行に対して{ah1/ai1,ah2/ai2,...ahn/ain}がマルチ集合としてUの各元をちょうどλ個含むことをいう.このような行列の各行はUのn個の直積群Un=U×...×Uの元と見ることができる.H24年度にはこのようなdifference matrixの中で行全体の集合がUnの部分群Wのcoset達の和集合となるものについて考察した.このようなdifference matrixは部分群Wに関するcoset型であるという.特にWがAのある行wで生成されるとき行wに関するcoset型difference matrixであるという.coset型のdifference matrixに関してde Launeyは行全体が群をなすときでk=uλ場合についてgroup Hadamard matrixと呼んだ.McDonough等はこのときU基本可換p-群となることを示した このcoset型に関してH24年度には次の結果を得た. 定理1.AがU上の(u,uλ,λ)-difference matrixで,Aがある行に関してcoset型ならばλ=1かまたはexp(U)はλの約数である. 定理2.Aを素数位数pの群U上のcoset型の(p,k,λ)-difference matrix (k>p)とするとpはλの約数でかつU上の正規化されたp個の小型の(p,k/p,λ/p)-difference matrices A1, A2,.,,Ap を選ぶことができてAはwと(A1,A2,.. ,Ap) を用いて第i行(1≦i≦p)を(A1,A2,.. ,Ap)wi-1とするk行uλ列の行列に拡大したものと同値になる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度に計画していた群U上のGH(u,λ)行列を中心とする(u,k,λ)-difference matrixについては,特殊な場合を除いてexp(U)がλの約数であることを得たがこれは群Uの構造に制限を与えていることになる. さらに群が素数位数pのときを完全な意味で分類できた.すなわち行数も列数も素数pの倍数であることが示されて行数と列数を1/pに縮小した正規形のものから自然に拡大されることが示された点で完全に解明されたと考えている.初期の段階では,方向性がある程度しか分からない状態であったが,素数pの場合には完全な意味で分類までできたので,この観点からでおおむね順調に進展したと考えている.
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