研究実績の概要 |
26年度は (u,k,λ)difference matrix のパラメータ kの限界に関する研究をさらに進めた.なかでも difference matrix を定めている位数uの群Uが基本可換p-群のときを中心に研究を行った.与えられたu, λに対してk≦uλであることが知られているが,現状ではk=uλが可能かどうかが未決定のλが大部分である.このようなλについて,kの限界 及び より大きなkの構成について研究を行った.方法の一つとして,群Uは基本可換p-群であるからu=q (pの累乗)とおいて加法群(GF(q),+)とみなすことができる. 従ってGF(q)の乗法群(GF(q)-{0},x)の利用が重要となると考える.これよりλがq-1の約数の場合に注目して,GF(q)からGF(q)への関数を考えてそれが構成につながるものを考察した.知られている実例をもとにそれを一般化して無限系列を構成することが目標の一つであった.素数p がソフィージェルマン素数であるとは2p+1も同時に素数となることをいうが,この研究ではそれを一般化して2p + 1が素数べきになるとき,pを擬似ソフィージェルマン素数と呼んで利用した。p を擬似ソフィージェルマン素数としてq=2p+1とおく。この条件のもとで有限体の加法群Fqから乗法群Fq - {0} への関数 fを利用してZp 上の(p, (p-1)q/2, q)-difference matrix の存在を示すことができた。その方法は上記の関数を用いて点上正則に作用する位数p2qの群でブロック集合上は正則でないTDq((p-1)q/2, p)を構成することである。このようにして構成されたdifference matrix は従来知られていたものより可能な行数を大幅に改善したという点において価値ある結果であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)26年度の目標であった(u,k,λ)difference matrix のパラメータ kの限界に関する研究が擬似ソフィージェルマン素数の場合に大幅に改善できた.具体的にはこの分野の研究をまとめたHandbook of Combinatorial Designs (Colbourn-Diniz), 2007にある表では得られていなかった部分を追加することができた.擬似ソフィージェルマン素数以外の素数についてはまだ課題を残した形になったが,加法群から乗法群への関数を考えるという点と通常の方法とは異なる手法を開発できたという点で価値があり,このことから順調な研究経過で進んでいるといってよいと考える.
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