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2013 年度 実施状況報告書

保型形式の整数論、具体的構成の観点からの研究領域の拡張

研究課題

研究課題/領域番号 24540025
研究機関熊本大学

研究代表者

成田 宏秋  熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (70433315)

キーワード例外型リー群 / 一般化ホウィッタカー関数 / 5次元双曲空間 / マースカスプ形式 / リフティング / 保型L関数の中心値 / 超幾何関数
研究概要

1)例外型リー群G_2の四元数離散系列表現に対するハイゼンベルグ部分群に関するホウィッタカー関数の明示公式について、これまでに得た零関数になるという結果の矛盾についてその原因を突き止めようと研究を続けたがこの年度では進展が得られなかった。
2)5次元双曲空間上のマースカスプ形式のリフティングによる構成については、大きな進展が得られたと言える。今年度はリフティングがヘッケ作用素に関する同時固有形式であることを証明することについて詳しい研究を行った。その結果、実際にすべての有限素点でそのようになることが証明できた。またリフティングが生成する保型カスプ表現についても調べることができ、それが次数4の一般線形群の大域的な放物型誘導表現とほとんどすべての有限素点で同型となる、つまりCAP表現であることが証明できた。そしてこの保型表現がラマヌジャン予想の反例を与えることも示すことができた。一般線形群の場合のラマヌジャン予想は強く信じられているが、我々はその内部形式である四元数環上の次数2の一般線形群の場合でラマヌジャン予想の反例を与えている. これは純粋に保型表現論的議論からも導かれると思われるが、保型形式という関数のレベルで反例を実現している点に我々の結果の意義がある。この成果はオクラホマ大学のアメヤピターレ氏との共同研究による。
3)四元数環上の保型形式に付随するランキンL関数の中心値の非消滅を超幾何関数の特殊値を使って調べる問題について、九州大学の蛭子彰仁氏の指摘により、ヤコビ多項式を使った別証明があるとの指摘を受けた。それは有限個を除いたすべての場合で我々の関心のランキンL関数の中心値の非消滅を意味する。よって残った有限個の場合について計算すればよいということになり、計算機を使って残りの場合の処理を試みたが、実際には計算量が莫大で現実的には処理不可能と認識するに至っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

大体上の3つのテーマで研究してきたが、2つ目のマースカスプ形式のリフティングによる構成の研究は計画通りに進んだと言える。しかし、他の2つについては思うような進展が得られなかった。また上記の研究実績の概要には記さなかったが、実数値保型関数の研究もテーマとして挙げてきたが、現在のところよい研究手法が見つからず行き詰まりの状態と言わざるを得ない。以上の現状から、総合すると「やや遅れている」という評価が妥当であると思う。

今後の研究の推進方策

1)例外型リー群G_2のホウィッタカー関数については、四元数離散系列表現に限定せず一般の離散系列表現の場合を眺めるという方法で、現在得られている結果の問題点を探る研究を引き続き進めることを考えている。
2)リフティングによるマースカスプ形式の構成については、このリフティングが「マース空間」というフーリエ係数の条件で特徴付けられる空間に入っているのではという問題が持ち上がっている。この概念はリフティングに付随するL関数の研究につながると考える。またこの概念を深めることは将来的に無限積表示を持つ非正則保型形式の構成にもつながるのではという期待がある。今後の研究を見据えて残りの年度はこのリフティングを特徴付けるマース空間の定義を探す研究をテーマの一つに取り上げたい。
3)ランキンL関数の特殊値については、当初の超幾何関数の特殊値で統制する方法に方針を戻した方が生産的であると感じている。一方、九州大の蛭子氏からは、この手法には彼自身の感覚として限界があるのではというコメントをもらっている。よって超幾何関数の特殊値を使った手法による研究を考慮に入れつつ、何か新しい方法を探りながら研究する必要があると考えている。

次年度の研究費の使用計画

当初は年度末にアメリカへの海外出張の予定であったが、それが困難な状況であることが分かり、国内の出張に留めざるを得なくなった。
型落ちしたノートパソコンを新型のものに変える経費や、研究会開催等のための旅費の支出に充てる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] ε-dichotomy for some global theta lifts to GSp(1,1)

    • 著者名/発表者名
      成田宏秋
    • 学会等名
      TORA-V
    • 発表場所
      オクラホマ州立大学
  • [学会発表] Lifting from Maass cusp forms for Γ_0(2) to GL(2) over a division quaternion algebra

    • 著者名/発表者名
      成田宏秋
    • 学会等名
      RIMS研究集会「保型形式及び関連するゼータ関数の研究」
    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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