研究概要 |
本研究では,研究代表者が定義した標準 Whittaker (g,K)-加群の構造を解析し,その組成列の決定を主目的としている.昨年度までに,既に無限小指標が generic な場合と,群が U(n,1), Spin(r,1) の場合については,標準 Whittaker (g,K)-加群の構造を決定してある.そこで一般の群の場合を調べるための手がかりとして,平成25年度も具体例の構成を目的として,他の群,特に Sp(2,R) や Spin(2n,2) の場合に取りかかったが,かなりの困難に直面した. そこで今年度は,次の二つに重点を置いて研究を進めた. まず第一は,本研究の主題と類似した問題である Kazhdan-Lusztig 予想や,深く関係すると思われる isotropy 表現に関する結果と,本研究で既に得られた結果とを照らし合わせ,類似点・相違点を探ることである.これについては,群が split な場合には,標準 Whittaker (g,K)-加群には自己双対的な構造があり,主系列表現の組成列を上下に貼り合わせたものになっているのではないかという観察を得たが,それを証明するまでには至らなかった. 第二に,標準 Whittaker (g,K)-加群の一部の構造は,Jacquet 積分により主系列表現の構造からわかるので,本研究と関連した研究として,主系列表現の socle filtration を明示的に決定する問題に取り組んだ.その結果,Sp(2,R) や SL(3,R) の主系列表現の socle filtration を完全に決定することができた. また,以前から研究を行っていた,多重旗多様体上の対合的部分群による軌道分解についても,成果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究実施計画では,平成25年度には Sp(2,R) や Spin(2n,2) といった実階数2の群の標準 Whittaker (g,K)-加群の組成列を完全に決定する予定でいたが,上記研究実績の概要にあるように,この点に関しては困難に直面し,決定に至っていない. その一方,標準 Whittaker (g,K)-加群の一部の構造については,主系列表現の socle filtration を調べることで,研究の手がかりを得ている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,実階数の高い群の場合には,U(n,1) や Spin(r,1) で成功した手法をそのまま適用することで標準 Whittaker (g,K)-加群の構造を解析するのは困難であると思われる.そこで既に始めているように,主系列表現の socle filtration を求め,それを援用することで標準 Whittaker (g,K)-加群の構造の一部を決定することを,次年度の目標とする.これは,申請時に平成26,27年度の研究課題として挙げていた,標準 Whittaker (g,K)-加群の組成列問題を Kazhdan-Lusztig 予想の結果に結びつけることとも関連している.また,isotropy 表現の理論との関連も調査したいと考えている.
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