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2012 年度 実施状況報告書

p進球関数の明示的公式とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 24540031
研究種目

基盤研究(C)

研究機関早稲田大学

研究代表者

広中 由美子  早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10153652)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード数論
研究概要

2012年度は主に,$p$ 進体上の不分岐ユニタリ・エルミート行列の空間$X$について研究した,但し $p \ne 2$.ユニタリ群 $G$ を,逆対角線上に$1$ が $2n$ 個ならぶ行列を固定するユニタリ群として与え,$X$ はその中でエルミートであり,代数的閉体上で単位行列を含む軌道の有理点集合として定義する,従って $X$ はサイズ $2n$ の行列からなる.$K$ を $G$ の整点からなる極大コンパクト部分群とする.
$G$ が作用する空間 $X$ をヘッケ環 $H(G,K)$ の作用を通して解析したい.
$X$上の球関数とは,$X$ から複素数体へのヘッケ環同時固有関数を意味し,これを具体的に求めることは基本的かつ重要な問題である.この空間 $X$ の球関数は,$p$進ジーゲル特異級数と密接な関係があり,その点からも興味深い.
まず,この空間$X$ の $K$-軌道分解(カルタン分解)を与え,$X$上の典型的な球関数 $\omega(x;s)$ を定義し,その関数等式や極・零点の位置を調べた,ここで $x \in X$ で,$s$ は $n$ 次の複素変数である.また,$C_n$型のルート系に付随するマクドナルド多項式の特殊化を用いて,$\omega(x;s)$ の明示式を記述できる.これを核関数に用いて $X$ 上の球フーリエ変換を定義し,$X$ 上のシュバルツ関数の空間 $S(K\backslash X)$ を解析した.球フーリエ変換はヘッケ環の作用と可換であり,$S(K\backslash X)$ は,階数が $2$の$n$乗の自由ヘッケ環加群であることが分かる.また,$X$上のすべての球関数のなす空間が $2$の$n$乗次元であることも分かり,先の典型的な球関数を用いて,全体の基底を構成した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今回の空間は,代数的閉体上では $U(2n)/U(n)\times U(n)$ と同型になる.以前,対称行列 $T$ ごとに付随する空間 $X_T$ をある種の商空間として実現して解析した.この空間 $X_T$たちは,$p$進ジーゲル特異級数との関連が直接的で興味深い対象であるが,商空間として実現したために,空間として必ずしもとらえやすいものではなかった.今回研究した $X$ は,$X_T$ 二つ分と同一視することができ,こちらの空間の解析を通じて$X_T$ では分かっていなかったカルタン分解も決定することができた.
また,今回の空間自体,ユニタリ・エルミート行列の空間として自然な対象であるから,この空間の球関数に基づいた調和解析的理論が基本的に完結したことの意義は大きい.しかし $p \ne 2$ と限定したことは残念でもある.dyadic の場合は,カルタン分解が対角型でない代表系をもつことは分かっている.それが球関数論にどのように反映されるかは今後の課題である.またこのような空間の実現をすれば,行列のサイズを偶数に限ることは必然ではなく,今後の研究が必要である.

今後の研究の推進方策

今年度の達成度の項目でも触れたが,同様のユニタリ・エルミート行列の空間を行列のサイズが奇数の場合に研究し,偶数の場合と比較検討することはまずなされるべきことである.こちらも$p \ne 2$ のときは,おおむね順調に進みそうであり,dyadic の場合の問題点も探りたい.典型的な球関数の明示式は,やはりある種のマクドナルド多項式の特殊化が現れると予想されるが,その差異についても考えたい.また,定数部分に現れる量の意味もさぐりたい.これは,組み合わせ論的量として解釈されることが望まれる.
2012年度に引き続き,立教大学の小森靖氏を連携研究者として迎えて,研究を進める予定である.概均質ベクトル空間の理論も球関数には密接なつながりがあるので,立教大学の佐藤文広氏を連携研究者に迎え,関係する研究集会(例えば6月に京都で予定されている)にも積極的に関わっていきたい.もちろん本研究は,そもそも保型形式や表現論の枠組みの研究であるので,それらの研究者にも批評を仰ぎつつ,研究連絡をとっていきたい.
また,研究集会「数論女性の集まり」を主宰し,自分自身の研究発表をして批評を仰ぐとともに,関連する研究者の講演や討論を踏まえて,この研究を進めて行く予定である.

次年度の研究費の使用計画

購入する予定の書籍で入荷されなかったものがあり,5037円の繰り越し金が発生したが,次年度の図書購入費と合わせて使用する予定である.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Spherical functions on the space of $p$-adic unitary hermitian matrices2013

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Hironaka and Yasushi Komori
    • 雑誌名

      京都大学数理解析研究所講究録

      巻: 1826 ページ: 110 -- 128

  • [雑誌論文] $p$ 進ユニタリ・エルミート行列の空間上の調和解析2012

    • 著者名/発表者名
      広中 由美子
    • 雑誌名

      「数論女性の集まり」報告集

      巻: 5 ページ: 39 -- 47

  • [学会発表] Spherical functions on the space of p-adic unitary hermitian matrices

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Hironaka
    • 学会等名
      Seminaire Theorie des representation et analyse harmonique
    • 発表場所
      IRMA Strasbourg, France
    • 招待講演
  • [学会発表] p-adic unitary hermitian matrices and spherical functions

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Hironaka
    • 学会等名
      Representation theory of algebraic groups and related topics
    • 発表場所
      城西大学,東京
    • 招待講演
  • [学会発表] Spherical functions on the space of p-adic unitary hermitian matrices

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Hironaka
    • 学会等名
      The first US-EU conference on automorphic forms and related topics
    • 発表場所
      Aachen Univeristy, Germany
    • 招待講演
  • [学会発表] p 進ユニタリ・エルミート行列の空間上の球関数

    • 著者名/発表者名
      広中 由美子
    • 学会等名
      第5回数論女性の集まり
    • 発表場所
      早稲田大学,東京
    • 招待講演
  • [学会発表] Spherical functions on the space of $p$-adic unitary hermitian matrices

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Hironaka
    • 学会等名
      Number Theory Seminar
    • 発表場所
      Yale University, USA
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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