研究課題/領域番号 |
24540034
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮岡 洋一 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (50101077)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | エフェクティブな Green-Lang 予想 / 代数曲面 / 標準次数 / 尖点曲線 / オービフォールド / B-M-Y 不等式 |
研究概要 |
M. Green と S. Lang は,一般型多様体が含む有理曲線や楕円曲線すべての和集合がザリスキ稠密となることはないであろうと予想した。L. Caporaso, J. Harris, B. Mazur は,Green-Lang の予想が正しければ,一般型代数曲面が含む有理曲線や楕円曲線と標準因子との交点数(標準次数)は,その曲面の位相不変量で上から評価されることを指摘した。この評価を具体的に与えよという問題が,エフェクティブな Green-Lang 予想であり,本研究課題の最終目標である。この目標に関連して,代数曲面上の曲線に関する種々の有限性定理を研究し,またそのための道具として,開いたオービフォールド上の Bogomolov・宮岡・Yau型不等式(B-M-Y 不等式)の改良を試みた。 平成24年度でもっとも注力した課題は,一般型曲面上に通常2重点のみをもつ種数 g の曲線を与えたとき,この曲線の標準次数を g と曲面のチャン数の関数によて上から押さえることであった。この問題は B-M-Y 不等式二より,特異点の個数の評価に帰着するが,これは非常に難しい問題で,まだ解決できていない。しかしながらアフィン曲面理論で多くの研究者の関心を集めている尖点曲線(特異点として尖点しかもたない曲線)については,B-M-Y 不等式が非常に強い情報を与え,結果として,任意の曲面の上であっても,尖点の個数を評価することが可能となりそうである。たとえば,まだ最終的な結果とは言えないが,以下の興味深い成果が得られた。「Hirzebruch 曲面上の有理曲線の特異点がすべて (2,3) 型カスプのみからなると仮定すると,特異点の個数は4以下である」。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エフェクティブな Green-Lang 予想において,もっとも重要でかつ難しいと考えられている問題は多数の通常2重点のみをもつ曲線が存在するか否かであるが.これについては残念ながら顕著な進展は得られなかった。そのかわりに尖点をもつ曲線については B-M-Y 不等式を改良することによってさまざまな情報が得られることがわかった。24年度内にまとまった成果が得られたのは,もっとも単純な尖点である (2,3) カスプの場合であるが,こうした成果を一般のカスプへと一般化し,Hirzebruch 曲面上の尖点曲線の個数を曲線の種数でk評価することは十分見込みのある課題だと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終目標であるエフェクティブな Green-Lang 予想の解決のため,通常2重点をもつ曲線の標準次数の研究を続行しつつ,これから派生した問題である有理曲面上の尖点曲線について研究する。具体的には,射影平面やHirzebruch 曲面上の尖点曲線について,尖点の個数を曲線の種数で評価し(種数0の場合は4個以下であることが予想されているが,現在のところ23個以下しか知られていない),ホモロジー複素平面理論にひとつの決着をつけることが,当面の目標である。また評価の上限を達成する曲線は,さまざまな点で興味深い性質をもつと期待される。例を構成するとともに,その性質を調べていく。こうした問題については,専門家である F. Catanese, T.K. Moe, X. Roulleau といったヨーロッパ在住の研究者たちと連絡をとりつつ研究を進める。 上記の新規研究と平行して,30年来の研究成果をまとめ,専門書『複素多様体論』および『代数曲面論』の2冊を執筆する。従来の成書ではほとんど触れられなかったベクトル束理論やオービフォールド理論を詳しく解説し,その応用として Reider 理論のような消滅定理やチャン数の不等式を扱う予定である。曲面の Enriques 分類といった古典的理論においても,一般次元双有利幾何学理論に沿った新しいアプローチを導入したいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究連絡および成果発表のため,研究の進展に応じて欧州への海外出張を2度程度,国内出張を数回行う。ほかに6月末から7月初めにかけて韓国釜山で開催されるアジア数学会儀に組織委員のひとりとして出席し、アジアの数学者たちとの情報交換を行う。
|