研究課題/領域番号 |
24540035
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
梶原 健 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (00250663)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 対数構造 / ピカール多様体 / 退化代数多様体 |
研究概要 |
本年度に得られた主な研究成果は2つある.1つは,対数アーベル多様体の有限表示性であり,もう1つは,完備離散付値体上の対数アーベル多様体の完備性である.対数ピカール多様体の幾何を研究するために,この種の多様体の完備性は重要である.対数ピカール多様体は対数アーベル多様体なので,より一般に,対数アーベル多様体の完備性に関して,研究を実施した.対数アーベル多様体に関して,加藤和也氏(米国,シカゴ大学),中山能力氏(一橋大学)との共同研究も実施している.以下,研究成果について説明する. まず,対数アーベル多様体の有限表示性を証明した(上記,共同研究).対数アーベル多様体のこの性質により,整数環上有限生成な環の上で定義された多様体に帰着できる.また完備性を議論する上で必要な性質でもある.なお,対数アーベル多様体は代数多様体ではなく,対数構造を利用して定義した対数代数空間であることに注意する. 次に,完備離散付値環上の一定のトーラス階数を持つ退化から定まる対数アーベル多様体について,その台空間にあたる空間の完備性を証明した.具体的には,対数1モチーフの場合に帰着し,付値体上の切断を付値環に一意的に延長されることを示した.後者のポイントは対数アーベル多様体に付随する対合の許容性である.この結果により,完備扇に伴う対数アーベル多様体のモデル(これは対数構造を持つ代数空間)が完備であることがしたがう.また,対数ピカール多様体の場合,半アーベル多様体であるようなピカール多様体のコンパクト化が,対数構造を用いて自然に構成されたことを意味する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は退化多様体のピカール多様体を対数構造の観点から研究することである.この目的を達成するために,半安定多様体のピカール多様体を対数アーベル多様体として拡張する研究を進めている.今年度の研究により,対数アーベル多様体の有限表示性と,完備性に関する成果が得られた.本年度の予定は,対数ピカール多様体の構成や,その多様体を代表するモデル(代数多様体)の研究であった.研究実績の概要のとおり,対数ピカール多様体の構成や幾何学の基礎研究が進展したので,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き,対数ピカール多様体の完備性,およびその対数多様体のモデルの完備性を対数アーベル多様体の観点から研究を遂行する. 対数ピカール多様体や対数アーベル多様体は対数代数空間という対象である.これらは代数多様体ではないが,研究の手段として,そのモデル(代数多様体)が豊富にある.それらのモデルは扇から定まる.とくにモデルが完備である場合が重要であると考えられる.この場合に,トーリック幾何やトロピカル幾何などの扇の幾何を参考に,対数ピカール多様体の不変量を研究する. 曲線の場合に,対数ピカール多様体の自己双対性について研究する.対数アーベル多様体には,自然に双対対数アーベル多様体の概念がある.これについて現在,共同研究が進行中である.この研究とも並行しながら,双対対数ピカール多様体の構成,および主偏極に伴う自己双対性を証明する.従来の半安定曲線のピカール多様体のコンパクト化では,双対性の概念が難しい.対数アーベル多様体のように自然な双対性を利用できる点が本研究の長所である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に生じた残額は,多様体の不変量などの調査,情報収集のためにの資料が一部遅れ,年度内に間に合わなったためである.次年度に引き継いで使用する計画である.
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