研究課題/領域番号 |
24540035
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
梶原 健 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (00250663)
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キーワード | 対数構造 / ピカール多様体 / 退化多様体 |
研究概要 |
本年度、実施した研究はおもに、完備離散付置環上の対数アーベル多様体の研究、対数アーベル多様体の射影モデルの研究、ピカール多様体の自己双対性の研究である。対数アーベル多様体に関する研究は、加藤和也氏(米国、シカゴ大学)、中山能力氏(一橋大学)との共同研究である。 完備離散付置環上の対数アーベル多様体の研究において、ファイバーごとの偏極可能性を弱めて、許容対合を利用した弱対数アーベル多様体を導入した。弱対数アーベル多様体は、複素解析的な類似で言えば,代数的な対数複素トーラスに対応する概念である。完備離散付置環上の弱対数アーベル多様体に関して、部分的な偏極を課した対象のなす圏を完備離散付置環やその分数体上で考える。このとき、これらの圏の間の圏同値が得られた。さらに偏極を課した対数アーベル多様体の圏への拡張を現在、研究中である。 対数アーベル多様体の射影モデルを偏極から構成するために、双拡大を利用して研究を進めた。対数構造に付随して定義されるいくつかの双拡大を利用して、テータ関数から射影モデルを構成する方法がわかった。現在、詳細を検討中である。 対数ピカール多様体について、上述の圏同値を利用して、自己双対性などの幾何的な性質を示すために、対数アーベル多様体と並行して、双拡大を研究した。自己双対性を証明するために必要な双拡大の性質が明らかになった。このように、対数アーベル多様体に関する圏同値にはさまざまな応用があり,重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は退化多様体のピカール多様体を対数構造の観点から研究することである。この目的のために、半安定多様体のピカール多様体を対数アーベル多様体として拡張する研究を進めている。これまでの研究により、完備離散付値環上の対数アーベル多様体の族に関するマンフォードの構成の一般化が整備されつつある。対数ピカール多様体にこの対数アーベル多様体の理論を応用することで、従来のピカール多様体に関する研究が自然に拡張される。研究実績の概要のとおり、対数アーベル多様体の基礎理論の進展により、ピカール多様体に関する自己双対性の研究が進展しているので、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
対数ピカール多様低の完備性、射影性、それらのモデル、および双対性を、対数アーベル多様体の観点から研究を遂行する。射影性では、対数アーベル多様体上の対数構造に付随する主束や双拡大を利用する。また、このような束に関して、完備離散付値環上の形式的な対象と代数的な対象の比較定理を研究する。最終的には、完備離散付値環や完備離散付値体上の対数アーベル多様体のなすいくつかの圏の間の圏同値の証明を目指す。これらの対数アーベル多様体に関する研究は、加藤和也氏(米国、シカゴ大学)、中山能力氏(一橋大学)との共同研究であり、現在、進行中である。 次に、これらの研究を、対数ピカール多様体の研究に応用する。とくに圏同値を用いて、なめからな射影多様体における幾何を対数的なめらかな退化多様体の幾何へ、自然に拡張できることが期待される。このような幾何として、対数的なめからな曲線に関する自己双対性を研究する。従来の方法では、自己双対性を拡張する際、退化多様体のピカール多様体のコンパクト化に対して、その双対多様体の構成が複雑である。そのため、自己双対性などの幾何を扱うのが難しくなる。対数アーベル多様体論を用いた本研究では、よい退化アーベル多様体まで含めた双対対数アーベル多様体など、従来の理論が自然に拡張されることを目標としている.したがって、これまでの退化多様体のコンパクト化に付随した個別な議論が簡易化されることが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、モジュライ空間や変形理論など、本研究に関する資料の価格に若干の変動があり、また予定した資料が期間内に調達できなかったためである。 本年度の計画を次年度に引き継ぎ、関連資料の調達に使用する。
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