研究概要 |
Jacobian Kummer曲面(の非特異モデル)は5次元射影空間の(2,2,2)完全交差として実現される事が知られている。この完全交差には、2-torsionのblow-upにより得られる16本の直線と、テータ因子を平行移動したものの像(trop)として得られる16本の直線が存在する。これ等32本の直線はRosenhainの超平面と呼ばれる、80枚存在する特殊な超平面による切断として得られる。この事は古典的に知られているが,具体的に32本の直線を記述する事は簡単ではない。本年度は、Riemannのテータ関数を利用して、主偏極Abel曲面から5次元射影空間への有理写像を具体的に書き、Jacobian Kummer曲面のSiegel modular多様体上のfibrationを構成し、80枚のRosenainの超平面と32本の直線を具体的に構成した。このK3-fibrationはShiodaのelliptic modular曲面S(4)の高次元化とみなす事ができ、興味深い高次元多様体の例を与えている。また計算機を用いて、有限素体FF_19上定義されたJacobian Kummer曲面で,32本の直線もFF_19上定義されているものを構成した。 研究成果は「第6回玉原特殊多様体研究集会(東京大学玉原国際セミナーハウス,2012年9月3日~9月6日)」において講演し、論文「On Jacobian Kummer surfaces」にまとめ「Journal of the Mathematical Society of Japan」に投稿し受理された。
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