研究実績の概要 |
24年度はRiemannのテータ関数を利用して、主偏極Abel曲面から5次元射影空間への有理写像を具体的に書き、Jacobian Kummer曲面のSiegel modular多様体上のfibrationを構成し、80枚のRosenainの超平面と32本の直線を具体的に構成した。このK3-fibrationはShiodaのelliptic modular曲面S(4)の高次元化とみなす事ができ、興味深い高次元多様体の例を与えている。また計算機を用いて、有限素体FF_19上定義されたJacobian Kummer曲面で,32本の直線もFF_19上定義されているものを構成した。 25年度はMilano大学のBert van Geemen教授と共同研究により、接空間への作用がtype(2,2)となるorder 3の自己同型を有する4次元Abel多様体のモジュライを調べた。この自己同型のsymplectic表現をMとすると、考えているAbel多様体の周期行列は4次Siegel上半空間のMによる固定点として特徴付けられる。この様な点の集合は4次元I型領域であり、例外的な同型によりIV型領域とも同型になる。従って、K3曲面の周期領域と考えることも出来る。この領域を適当な算術的離散群で割ったmodular多様体は4次元10次超曲面であり、自然にWeyl群W(E6)が作用する。この超曲面を調べる事により、B. HuntによるIgusa4次曲面のHessianが算術商であるという予想を肯定的に解決した。 26年度は、24年度に調べた問題と関連して、ある種のSiegel modular多様体の整数点を調べるため、計算機を用いて計算を行ったが、小さな整数の範囲には存在しない事が判明した。しかし、1つも存在しないかどうかはわかっていない。
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