平成26年度は、平成25年度までの本研究で明らかになった、高次元配列に対する群作用とその不変式の研究に対する、サグビー基底の有用性に注目し、さらにその方面に集中して不変式環を調べた。その結果、不定元を成分とする2x2x3型、2x2x4型の3次元配列に対する特殊線型群の作用に関する不変式環と、そのサグビー基底を求め、とくにその不変式環が有限サグビー基底をもつこと、さらに、その不変式環の先頭項部分環(initial subalgebra)の正規性、ゴーレンシュタイン性などがわかり、このような群作用と、その不変式のサグビー基底の重要性をさらにいっそう浮き彫りにすることができた。 さらに、高次元配列データに関連して定義される行列式多項式(determinantal polynomial)のある種の積の1次独立性に、単項式順序を一般化した単項式前順序(monomial preorder)が有効であることも、研究の過程で判明した。 次に、本研究全体を通じての研究成果について述べる。 本研究は、サグビー基底の観点から、群作用とその不変式環を調べるところから始めたが、その過程で、高次元配列データに対する群作用とその不変式環が興味深い対象であることが判明し、とくにその分野について詳しく調べた。 その結果、いくつかの高次元配列データに対する群作用の不変式環や、そのサグビー基底を求めることに成功しただけでなく、高次元配列データに関連して、それに伴って定義される行列式イデアル(determinantal ideal)の性質や、行列式多項式のある種の積の1次独立性と、単項式前順序の関係が判明するなど、不変式環やそのサグビー基底のみならず、可換環論の様々な概念と高次元配列の密接な関係をも明らかにした。
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