研究実績の概要 |
Xを複素数体上定義されたn次元非特異射影多様体, LをX上の豊富な因子とする. 最終年度となる本年度は以下のことについて調べ、成果を得た. (1) 4次元偏極多様体に対してK+3Lの大域切断のなすベクトル空間の次元が1となる場合の(X,L)の分類を行い, 完成させた. (2) n次元偏極多様体(X,L)でLが非常に豊富となる場合に(X,L)のclassという不変量が定義される. これはXをLによる射影空間への埋め込みと考えたときのXの双対多様体が超曲面になる場合はその次数と定義し, そうならない場合は0と定義したものである. Lanteri氏はn=2の場合に, ある条件のもと, (X,L)のclassがd(X,L)+2g(X,L)+1以上になることを示した. ただしd(X,L)はLの次数, g(X,L)はLの断面種数を表す. 今回の研究でこの結果を改良し, (X,L)のclassがd(X,L)+2g(X,L)+2以上になることを示すことに成功した. さらに等号が成り立つような(X,L)の分類にも成功した. なお, 随伴束K+Lがnefとなる任意のn次元偏極多様体に対して随伴束のm階テンソルm(K+L)の大域切断のなす次元が正となるmの値の最小値 m(n)について, 前年度に得られていた値の改良をめざしたが、本年度内に成果を得ることができなかった. 次年度以降にさらなる研究を進めたい.
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