研究課題/領域番号 |
24540044
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
土基 善文 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (10271090)
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研究分担者 |
松澤 淳一 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (00212217)
石井 亮 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10252420)
吉冨 賢太郎 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10305609)
菊地 克彦 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50283586)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非可換代数幾何学 / 非可換ケーラー多様体 / ケーラー多様体 / 非可換幾何学 / 射影多様体 |
研究実績の概要 |
非可換多様体一般の具体的な非可換環論を通した例とコホモロジー理論の構築を試みた。 なかんずく重要なのは研究代表者の発見した非可換ケーラー構造である。既存のMarsden-Weinstein quotient(シンプレクティック商)の理論を使った射影多様体の量子化の議論は、それ自体としてはよく知られたものではあるが、これを正標数の世界まで持ち込み、後にウルトラフィルターを用いた議論で元に戻ることを見込むと、かなり透徹した理解ができることが判明しつつある。 アイディアとしては、複素座標とその複素共役にあたる座標をどちらも同じ土俵に上げることで、ドルボー複体の類似品を構成することを考えた。これは複素数体上ではひとつの偶然的なテクニックに見えるが、非可換幾何学的には不確定性関係を表現する「正準交換関係」 を自然に導入することにあたり、その関連性は驚くべきものである。この考えは射影多様体に新しい光を注ぎ、Fubini-Study 計量が果たす役割と同様の役割を非可換代数幾何学で果たす。その意味でこれはこの分野における大変基本的な道具として歴史に残るだろうし、残すようにしなければならないものだと考えている。現在、射影空間、およびその部分多様体たる射影多様体について、細かい調整(というか観察)が行われている途上である。 その他、導来圏的な考察や、表現論、特に不変式論との関係についても模索されている。これについては徐々に関係がほぐれてきたことが観察されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非可換代数多様体の現在の理論、とくに射影多様体の非可換ケーラー構造の理論は大変多くの実を結ぶと期待される。これを得たのは研究代表者の大きな喜びであり、ぜひとも全世界に伝えたく思う。
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今後の研究の推進方策 |
非可換射影多様体、とくに(まずは)非可換射影空間を非可換ケーラー多様体として考察するのは、大変有用であるというのが前年度までにわかってきたが、これについての詳細な研究はまだ少し時間を要するようなので、本年度はこれについてまずはっきりさせたい。とくに、ドルボーコホモロジーの対称性や、通常の場合と非可換の場合との比較定理の考察などは重要であると思われる。 さらに、この考えを前進させつつ、非可換ケーラー多様体の一般的定義の可能性について考察したい。 他方で、圏論的、表現論的な側面については、これと並行していくつかの知見が今までも得られているわけだが、これをさらに推し進めて、誰の目にも明らかな形にしていきたい。これも時間がかかりそうなので、本年度はその一つのステップとして位置づけている。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍の手配からすこし手間がかかったり、必要なソフトのアップデートの時期のズレなどの理由による。
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次年度使用額の使用計画 |
書籍やコンピュータソフト、出張費として使用予定である。
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