研究実績の概要 |
本年度も前年度に引き続き,F分裂性を持たない正標数のdel Pezzo曲面,および3次元Fano多様体についての研究を中心に行った.前年度は,F分裂しない次数3のdel Pezzo曲面を調べた先行研究に続く形で次数2の非F分裂del Pezzo曲面の特徴づけを与えたが,今年度は残されていた細部の議論を完成させることで,論文としてまとめることができた(投稿中).また次数1のdel Pezzo曲面についても解析を行い,非F分裂性条件と反標準因子の超特異性条件の同値性は成り立たず,次数が2,3のときのような特徴づけは得られないことを具体例の構成により確認した.さらに正標数3次元Fano多様体についても調べ,基礎体の標数が11以下のときに非F分裂Fano多様体の具体例を実際に構成した. 一方,低標数における3次元標準特異点の変形空間についても研究を行い,有理二重点の同等特異的変形空間 (equisingular deformation space) の構造について解析した.すでに前年度までに標数が3以上の場合については定義方程式を明らかにしていたが,本年度は残された標数2の場合についても計算に取り組み,それぞれの特異点についてその同等特異的変形空間の次元や方程式を明らかにすることができた.これについても,論文としてまとめる予定である. 研究にあたっては,国内外の研究者と議論および情報収集を行うことを目的として,城崎代数幾何学シンポジウムを始めとした研究集会やセミナーで講演を行ったほか,ソルトレイクシティ,東京理科大学,高知大学などで行われたワークショップや研究集会にも赴き,他の参加者と活発な議論を行った.
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