研究課題/領域番号 |
24540048
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
足利 正 東北学院大学, 工学部, 教授 (90125203)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 特異点 / デデキンド和 / 符号数 / トーリック幾何 / 相互律 / 双有理変換 / 符号不足数 / オービフォールド |
研究概要 |
研究目的に掲げた巡回商特異点間の多重双対性についてはほぼ当初の計画に沿った成果が得られ、その内容を「Toric modifications of cyclic orbifolds and an extended Zagier reciprocity for Dedekind sums」と題する論文にまとめ現在投稿中である。 すなわち Oka-Fujiki modification によって孤立巡回商特異点は複数の(一般には非孤立な)より構造の簡単な巡回商特異点達に分解するが、それらはお互いに次の関係にあることが示せた。通常の余接関数をAtiyah-Singer 余接関数に置き換えることにより「重み付き Dedekind 和」の概念が定義できるが、これに関して上記特異点達の符号数、オービフォールド符号数、符号不足数の3つの不変量を比較することにより、Zagier 相互律を含む新しい相互律が証明できた。 Dedekind 和の相互律の拡張については色々なタイプのものが知られているが、上記の成果は特異点の双有理対応から生じる明確な幾何的状況の中での不変量の比較公式から得られた点に意義があると考えられる。また証明の途中で非孤立な特異点跡を持つオービフォールド L 類や符号不足数の具体的計算を行ったが、これらの量は従来具体的計算が容易ではないと考えられていたように思う。 またこの研究により、さらに一般の特異点の数論的不変量を考察する上での方法論的基礎の一部分が確立されたかもしれないと自負している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
孤立巡回特異点の Oka-Fujiki modification から生じる一般には非孤立な巡回特異点の符号不足数等の計算が実行でき、当初の計画にほぼ沿った形での相互律の定式化ができたためである。
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今後の研究の推進方策 |
以下の2点を中心に今後の研究を推進したいと考えている。 まず第1点は、HIrzebruch-Jung 連分数の高次元版を Dedekind和の明示公式にどう応用するかという点である。高次元連分数の定式化自体は構想が出来ているが、それをこの問題に応用する際 、Oka-Fijiki 解消で生じる非特異錐全体のなす組み合わせ的情報を詳細に記述する必要がある。そうでなければ必要なオービフォールド符号数の反復計算が出来ないため何とかそれを求め、状況を打開する道を探りたい。 第2点は、もう一つの研究目的として掲げた曲線族のファイバー芽の局所符号数を、モジュライ写像を経由して求める方法に関することである。まず周期的モノドロミーの場合については、リーマン面の自己同型に関するEichler 跡公式が、以前吉川謙一氏と共同で定式化した量の具体的計算に有用であることが具体例を通してしだいにわかってきた。このアイデアを用いて、何とか一般の定式化への道を探りたい。また擬周期的モノドロミーの場合については、上の場合の類似を追求する道具立てとして、まず安定曲線の自己同型に関する跡公式を考察し、それをDeligne-Mumford コンパクト化への写像の局所計算に結びつける道を探りたい。 なお第2点については、一般族の前にまず非超楕円的種数3の族について考察し、懸案の Horikawa指数の統制に向けてのこの方面からのアプローチを成功させたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内外の研究者を集めて研究集会を開くための資金や、多くの研究者の旅費補助等に利用したいと考えている。
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