研究課題/領域番号 |
24540051
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩行 東京理科大学, 理工学部, 教授 (60232469)
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キーワード | 正標数特異点 / 野生的群作用 / Artin-Schreier拡大 / K3曲面 / 疑似乱数生成 |
研究概要 |
A) K3曲面の p ねじれ部分群を Mordell-Weil 群に持つような族の構成を行ってきた。また、このような族と有理二重特異点の変形族との関連から、K3曲面のモジュライ空間の幾何学への応用を研究してきた。これを利用して、超特異K3曲面の単有理性予想の証明への手がかりとするよう試みたが、残念ながら、別の方法により超特異K3曲面の単有理性予想がC.Liedtkeにより証明されてしまい、本研究においてその検証を行った。今後は、予想証明における手法を応用して、我々の構成した族の解析を行う予定である。 B) 正標数特異点に関しては、本年度大きく力を入れ、一般理論構築へ向けた種々の証拠を得ることができた。主に、2次元商特異点に関して研究を行った。有限群による商特異点について、その基本群、双対グラフに関し興味ある結果を得た。また、群スキームによる商特異点に関しても、有限群による商特異点との変形による関連の可能性を追求し、一般理論構築に向けた準備が整ったと思われる。今後は、加法的群スキームによる商特異点と有限群による商特異点の変形による作用込みのつながりを構成し、それらの双対グラフに関する Tautness に関する性質を調べる。また、乗法的群スキームによる商と高次微分との関係より、任意のHirzebruch-Jung特異点は乗法的群スキームによる商として得られるであろうという問いへの解答も得られつつある。 C)疑似乱数生成に関し、Artin-Schreier拡大塔を利用したASTの改良とその性能評価について検討したが、良い結果は得られていない。非ケーラー多様体との類似に関する研究については、散発的な事象を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A) K3曲面のモジュライ空間に関する研究は、研究協力者の C.Liedtke 等による大きな進展のため、これまで得られていた p ねじれ群を Mordell-Weil 群に持つ場合以外、特に具体的な結果を得ていない。しかしながら、上述の大きな進展により、本研究がより一層進む可能性があり今後に期待する。 B) 2次元商特異点に関して、有限群による商の場合に大きな結果を得たこと、群スキームによる商との間の変形論的考察が進んだことから、予想以上に進展しているといえる。 C) 疑似乱数生成については計画に若干の遅れがあるが、非ケーラー多様体との類似に関する研究については、その困難さを考えるとそれなりに進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
A) 正標数のK3曲面やEnriques曲面のモジュライ空間の理論は、急速に進展しているので、あらゆる情報をもらさず収集し、自身の研究に取り入れていきたい。特に、超特異K3曲面の単有理性予想が証明され、そのモジュライ空間の幾何を究明する下地が整ったと考えられ、今後、最新の結果を応用した、超特異曲面のモジュライ空間の幾何学の研究を行っていく。 B) 2次元商特異点に関し、群スキームによる商と有限群による商の変形理論的考察を行い、これらを作用込みの変形でつなげた一般論を構築する。また、乗法的群スキームによる商について、標数0と正標数の間に変形理論的つながりを構築する。これらにより、正標数2次元特異点に関し大きな進展が見込まれる。 C) Artin-Schreier拡大塔を利用した疑似乱数生成 AST について、よりよい改良を目指し、性能評価を行う。また、Artin-Schreier拡大は、上述の特異点理論とも密接に関連していることや、その拡大塔の性質から、より広い分野への応用を探りながら研究を行う。 非ケーラー幾何と正標数代数幾何学との関連については、他分野との連携を図りながら研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗状況により、共同研究者齋藤夏雄氏(広島市立大学)との研究連絡の回数が、当初予定より少なくなったため。 研究の進捗状況を見ながら、研究連絡、成果発表などの旅費等に振り分ける。
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