当初の目標毎に記述する。 A)楕円K3曲面に関し、その楕円ファイブレーションが標数冪の位数のセクションを持つ場合について分類を行った。K3曲面となる場合は標数が小さい場合のみ存在するが、定義方程式とそのパラメーターを確定し、更に有理二重点の変形空間との興味深い関連を見出した。(C.Liedtkeとの共同研究。)また、Calabi-Yau多様体に関しては、持ち上げ不可能多様の構成の際に現れた標準特異点に関して、ある種の条件ものと標数が3以上の場合に分類できた。特に、標数零とは決定的に異なる現象があり、有理二重点の変形との関連から、その普遍変形空間内のTjurina数一定部分空間について興味深い結果を得た。 B) 正標数商特異点に関して、作用する有限群の位数が標数で割れるという、いわゆる野生的商特異点に関しては、S.Schroeerとの共同研究により、一般標数での興味深い具体的構成可能な例を提示し、種々の不変量を計算した。また、野生的商特異点の双対グラフのノードの数に関する問いが未解決であったが、それに関して、多くの興味ある結果と例を与えた。また、標数p特有の加法的群スキームによる商としての特異点を考察し、擬導分の理論を導入することにより、有限群商特異点とを変形でつなぐことにより統一的な扱いが可能となった。さらに、正標数有理二重点は商特異点か否かという問題に関して、問題の定式化を行うとともに、部分的結果を得た。 C) Artin-Schreier拡大塔を利用した疑似乱数生成に関しては、残念ながら大きな進展はなかった。また、正標数代数幾何と非ケーラー幾何との間のアナロジーに関しても大きな進展を得ることは出来なかったが、いくつか類似と思われる現象を集めることが出来た。今後の進展に期待することが出来ると思われる。
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