研究課題/領域番号 |
24540053
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
桂 利行 法政大学, 理工学部, 教授 (40108444)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | K3曲面 / 超特異 / クンマー曲面 / 有理曲線 / リーチ格子 / ピカール格子 / カラビ・ヤウ多様体 / 国際研究者交流(オランダ) |
研究概要 |
本年度の研究では2次元のカラビ・ヤウ多様体であるK3曲面を対象とし、標数5の超特殊K3曲面S上の非特異有理曲線のなすconfigurationについて、連携研究者金銅誠之、島田伊知朗と共同研究を行った。SはKummer曲面として実現できるが、まず、アーベル曲面上に零点で3重に接する種数2の曲線を2本構成する。これらの曲線を16個の2等分で平行移動してできる32本の曲線のKummer曲面への射影と、16本のexceptional curvesから、K3曲面S上に合計48本の有理曲線が得られるが、これらの有理曲線とF_{25}有理点が(96_3, 48_6)-configurationをなすことを示した。これらの曲線から、構成法によって16本の射影直線の組が3つできるが、このうちのどの2組を選んでも種数2の代数曲線のJacobi多様体からできる16_6-symmetric configuratonになることが示せる。16_6-configuratonは古くから知られている重要なconfigurationであるが、このように3組存在するという現象はこれまで知られていないと思われる。この理論は、符号理論を始めさまざまなところで用いられるLeech格子と関係しており、48本の有理曲線は格子における48個のLeech rootsに対応する。標数5の場合には、符号数(1, 25)のeven unimodular格子へのPicard格子の埋め込みが多数あり、埋め込みに応じてPicard格子内のLeech rootsの数も異なる。海外共同研究者van der Geerとは、正標数の代数多様体の不変量に関する論文を仕上げて発表した。具体的には、不変量間のある不等式が、我々の理論を用いれば、Illusieの理論における定理の条件を弱くしても成り立つことを示し、我々の理論が有効である例を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで研究してきた標数2, 3の超特殊K3曲面上の有理曲線のなすconfigurationの構造決定に引き続いて、標数5の超特殊K3曲面上の有理曲線のconfigurationの構造の解析が順調に進み、これまで知られていない興味深い構造が見出されている。また、Picard格子を符号数(1, 25)のeven unimodular格子に埋め込む方法が多数存在するという新しい現象に対して、対応する幾何学的な構造が次第に明らかになっており、標数5に特有の多様な現象の全容解明に向けた連携研究者との共同研究が順調に進んでいる。また、海外共同研究者のG. van der Geerとは正標数の代数多様体の不変量に関する論文を完成させ発表した。招待講演も4回行うなど研究成果の公表も順調に行っている。このような状況から「②おおむね順調に進展している。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、2次元カラビ・ヤウ多様体であるK3曲面を主な研究の対象とし、引き続き連携研究者金銅誠之、島田伊知朗と、多様な様相を示す標数5の超特殊K3曲面上の有理曲線のconfigurationの構造の全容解明にむけた共同研究を中心に研究を進める。Conwayによって符号数(1, 25)のeven unimodular格子のpoisitive coneの一方の連結成分に対する基本領域が決定されているが、そのPicard格子への射影は、基本領域の取り方によって、様々な形状をしている。それらのwallsをつくるLeech rootsの数が, 252個のchamber, 168個のchamber, 98個のchamber, 48個のchamberなど、様々なものが見つかっている。そのそれぞれに対するK3上の幾何学的構造を解析することが当面の目標になる。標数が3以上の場合には、超特殊K3曲面がアーベル曲面の商として得られるKummer曲面になることを利用して、格子理論からでてくるLeech rootsの幾何学的対応をアーベル曲面を用いて解析するという研究代表者の開発した手法がうまく機能しているので、その方法をさらに押し進める。また、正標数の高次元カラビ・ヤウ多様体については、知られていることは今のところ数少ないが、海外共同研究者G.van der Geerとも共同して代数的サイクルや微分形式などの基本的な解析から研究を進め、K3曲面の場合と比較しつつ構造を明らかにしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、主に、研究発表、研究打ち合わせ、研究連絡、代数幾何に関する情報収集のための旅費、ならびに代数幾何学とその周辺の知識を得るのに必要な書籍の購入に用いる。とくに、連携研究者金銅誠之名大教授、島田伊知朗広島大教授との研究連絡のため、名古屋大学、広島大学に適宜出張する。また、カラビ・ヤウ多様体の共同研究を行っている海外共同研究者のG. van der Geer教授との共同研究を行うため、研究代表者がAmsterdamに出張するか、あるいは同教授を日本に招聘する。代数幾何の情報を得るため7月初旬に釜山(韓国)で行われるアジア数学者会議(AMC2013)に出席する。9月にCetraro(イタリア)で行われる国際会議「Classification of Algebraic Varieties and related topics」および10月に城崎で行われる「代数幾何学城崎シンポジウム」に招待講演を行うため招聘されており、これらの会議で研究成果を発表するとともに代数幾何学の情報を収集する。この他にも、代数幾何学や数論関係の研究集会に参加し、研究遂行のための情報を収集する。
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