研究概要 |
本年度の研究では昨年度に引き続き、2次元のカラビ・ヤウ多様体であるK3曲面を対象とし、標数5の超特殊K3曲面S上の非特異有理曲線のなすconfigurationについて、連携研究者金銅誠之、島田伊知朗と共同研究を行った。昨年は、16本の有理曲線が3組あり、その2組ごとにKummer configuration (16_6-configuration)をなすことを示したが、本年度は、さらに進展し、16本の有理曲線が6組、合計96本の有理曲線が構成でき、その2組をとると、16_6-configuration, 16_12-configuration, 16_4-configurationのいずれかになり、それらがきれいな対称性を持って配置していることが示せた。K3曲面上の有理曲線のなすconfigurationの話に限定しても、K3曲面上の16_12-configurationの存在は、これまで知られていない新しい現象だと思われる。このような有理曲線の存在は、K3 曲面のピカール格子を通してLeech latticeと関係しており、Weyl群の作用の基本領域として得られるchamberのwallsをつくるLeech rootsとしてもとらえることができる。これらの結果は、共著論文「Rational curves on the supersingular K3 surface with Artin invariant 1 in characteristic 5」としてまとめて投稿し、現在査読中である。また、Fermat曲面と関係した超曲面から作られるLefschetz pencilsの構造を調べ、その退化ファイバーの構造とsectionsの群構造を決定し、単著として投稿し掲載が決定した(雑誌論文欄参照)。この超曲面はp=3の場合はK3曲面になり、準楕円曲面の構造を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
標数5の超特殊K3曲面上の有理曲線のconfigurationの構造が、想像以上に豊かな構造を持っていることが判明し、連携研究者との共同研究が、本年度一気に進展し、論文がまとまり、アメリカの雑誌に投稿できた(査読中)。 さらに、超曲面のLefschetz pencilsの構造が決まり、単著論文を作成し、その論文が日本数学会の編集する論文集にacceptされた。また、アーベル曲面のChern class mappingの単著論文もまとまって、雑誌に投稿中である。口頭発表も国内の研究集会で招待講演3度、公開セミナーで招待講演1度(代数幾何セミナー, 東京大学大学院数理科学研究科, 2013年11月8日)、海外の国際会議(イタリア)で招待講演1度、海外の大学の公開セミナーで招待講演2度(Research seminar, Leibnitz University Hannover, Germany, 2014年2月25日, 及びAlgebra en Meetkunde, University of Amsterdam, The Netherlands, 2014年3月3日)、合計7度の研究発表を行った。このような状況から「当初の計画以上に進展している」とした。
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